日本の私立中高に通わせるよりもハードルが高い
パブリック・スクールは、もともとは教会と密接なつながりがあるところが多く、その活動の一環として始まった部分もあります。しかし、歴史とともに徐々に形を変えてきており、教育にお金をかけることができる家庭の子どもたちが、名門大学入学を目指して通う学校という側面が強まってきています。
英国で子どもをパブリック・スクールに入学させたいと考えている親の理由には、このようなものがあります。
・自身がパブリック・スクールに通っていたので、子どもにも同等の良い体験をさせたい
・公立校に比べて充実した環境や施設で子どもを学ばせたい
・名門大学へのステップとして価値を感じている
卒業生に聞くと、同級生は親が資産家や実業家、銀行や大企業勤めの人が多いようです。英国でパブリック・スクールに通わせる、ということは日本の子どもたちを日本の私立中高に通わせるよりもハードルが高いのです。とくに費用面で。
日本だと、公立の進学校の滑り止めに複数校を受験するケースもあります。しかし英国ではシステムが異なり、パブリック・スクールの中でも名門とされるところは最終的に1校に絞り込まなければならないようです。そのうえ合否が決まる前に学費の一部を前納するところが多く、学費は日本に比べてかなり高額です。
5年通えば2500万円以上の出費
難関校の上位にいるような学校の場合、寄宿舎に暮らし、生活のすべてがほぼ学校で行われるようなところだと年間に平均して500万円ほどかかります。これで授業料のほかに住まい、毎回の食事、学外活動やイベントにかかる費用はほぼ賄われますが、5年通えば2500万円以上が必要です。それだけ学費が高額でも、やはりパブリック・スクールに行かせたい、という親はいます。
子どもに公立よりも細やかで質の高い教育とケアをしてもらえ、教師や生徒の平均的なレベルが高く、ある種の安心感があることが、ちょっと無理をしてでも入学させる決め手となっているようです。また、家族が代々パブリック・スクールに通っていること、希望する大学への合格率が良いこと(これは日本もそうですが)もあります。そのぶん、成績が落ちれば退学もやむなし、経済的に学費を支払うことができなくなった場合も同様です。