「所得と喫煙」の関係を掘り下げ、判明したのは……
今回は、所得と喫煙(と寿命)の関係について掘り下げてみましょう。
まず、そもそもの前提として喫煙が寿命と関係あるのでしょうか。これについては損失余命(lost life expancy=LLC )という考え方があります。
損失余命とは、人間が行う食事や日常の行動などに寿命を短くするリスクがどれくらいあるのかを示したもので、WHO(世界保健機関)をはじめ、各国の医療機関でリスク指標のひとつとして使用されています。
2001年1月に発表された医学雑誌『the BMJ(British Medical Journal)』の内容は次のようなものでした(http://www.bmj.com/content/bmj/320/7226/Letters.full.pdf)
英国の喫煙者は17歳から71歳までに1年5772本(1日15.8本だから1箱未満)、トータルで31万1688本を吸うと推計されます。また、英国の40歳以上の男性医師3万4000人の喫煙習慣を40年間追跡調査した結果出た、喫煙者と非喫煙者の寿命の差は6.5年でした。
こうしたデータを基に、タバコ1本あたりの損失余命を計算すると、1本吸うごとに寿命が11分短くなるという結果が出ました。1日1箱(20本)吸うと、単純計算で11×20=220分寿命が短くなり、1年間だと55.7日。かなり寿命に影響を与えることがわかります。
▼「1日1箱吸う人」は1本ごとに寿命が4.04分短くなる
日本国内でも、喫煙と損失余命の算出が行われています。
大阪工業大学工学部の渡辺信久教授は、タバコを吸い始める年齢を20歳とし、死ぬまで40歳時点でのペースで吸い続けると仮定して計算することで、「1日1箱(20本)吸う人」は、1本吸うごとに寿命が4.04分短くなると算出しています(http://www.oit.ac.jp/env/cardamom/~wastcoex/6_Risk_Percept_Accept/6_Risk_Percept_Accept_OkayamaUni2011_Slide_Wata.pdf)
タバコ1本でどれだけ寿命が短縮するか、その細かい時間は置いておくとして、喫煙が寿命と関係あることはわかりました。そこで次の段階として所得と喫煙の関係について見てみます。これがわかれば、喫煙を介して所得と寿命の関係が明らかになりそうだからです。