事故少ない&免許の返納率高い都道府県は?
当然、警察当局もこうした事態を放置しているわけではない。現在は3年に1度の運転免許証の更新時に、高齢者に対しては認知機能検査を実施している。
15年には、162万人の高齢者が認知機能検査を受けており、認知症の恐れがある第1分類が約5万人(約3.3%)、認知機能が低下している第2分類が約50万人(約30.8%)、認知機能の低下のおそれがない第3分類が約107万人(約65.9%)という結果になっている。
さらに、警察当局では、免許更新時だけではなく、臨時に認知機能検査を実施する仕組み、あるいは医師の診察を受ける仕組みを導入する方向で検討を進めている。
認知機能検査や交通違反などにより、認知症によって運転免許の取り消しや停止処分を受けた件数は年々増加しており、09年には228件だったが、15年には1472件となっている。また、運転免許の自主返納についても、05年には1万9025件だったものが、15年には28万5514件にまで増加しており、一定程度は根付いてきているといっていい。
では、ここで15年の高齢運転者の死亡事故件数、高齢運転者の免許人口10万人当たりの死亡事故件数、高齢運転者運転免許返納率の都道府県別のデータを見てみよう。
東京都、大阪府という大都市圏で高齢者の死亡事故が少なく、運転免許返納率が高いというのは、予想外の結果だ。しかし、大都市圏は交通インフラが整っていることから、運転免許を返納しても生活への影響が少ないということは考えられる。
だが、人口減少、高齢化は地方だけではなく、都市部の一部においても過疎化を発生させており、「シャッター商店街」などが増加、いわゆる買い物難民と言われる地域住民も増加している。こうした人々にとって、マイカーは生活上の重要な移動手段であり、自動車なしでは生活できない地域も増加していることは念頭に置いておくべきだろう。
高齢者の交通事故は今後も益々増加していくだろう。高齢化の進展とともに75歳以上の運転免許保有者数は、05年の約237万人から15年には約478万人に増加、18年には533万人に達すると予測されている。認知機能検査といった規制面からの対策だけではなく、高齢者が運転をしなくても問題なく生活できる環境作りも重要な対策だ。