プリウスはカッコ悪い
「やることはたくさんあるんですよ。例えば、今トヨタに入ってくる人たちは優秀な人たちです。先のことまで考えて、新型車に搭載できる技術の一部を、マイナーチェンジに備えて取っておく。出し惜しみです。マイナーチェンジの時にそれを投入すれば、やった仕事としてアピールしやすいし、クルマも具体的に変わった部分が訴求できますからね。でもそれはダメだと。出せる物は全部出し切って、マイナーチェンジに向けてはまた一から意欲的なチャレンジをすべきなんです。
優秀な人たちと言えばもうひとつあります。クレバーな議論はダメです。社内の議論は、社会の縮図であるべきなんです。(社内の人材は粒が揃っているが)現実の世界にはいろいろな人たちがいて、それぞれに考えることは違う。だから互いの立場を察した予定調和のような議論は止めようと。徹底的に文句を言い続けることが変革の力だし、チャレンジにつながります。TNGAの第一弾として重要な今回の(4代目)プリウスについても、私はずっと言ってますよ、『カッコ悪い』って。主査の豊島には最後までそう言い続けました。でもそれが健全な議論だと思います。言いたいことが言える。多様性を認める。トヨタと言う組織を変えていくには、そういう活発なコミュニケーションが一番重要なのです」(後編に続く)