目標設定シートでは◎より△を評価する

組織改革に加えて、豊田社長がもう一つ、トヨタという会社の体質を変えるために着手したと話すのが評価システムだ。

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2016年冬に発売予定の「プリウスPHV」(2代目)。PHVは「プラグインハイブリッド」の略で、家庭用の電源などから充電し、電気自動車として走ることもできる。

「成功したことだけを評価すると、誰も失敗をしたくなくなります。だから私は、打席に出たらまずバットを振れと言うんです。振った三振には、きちんと『ナイストライ!』と声を掛けてあげる体制がなくてはいけません。振らないで見逃し三振はダメ。それよりも、勇気を持ってバットを振ったことを評価するシステムが必要なのです。

トヨタ社内には『方針シート』と呼ばれる自己申告型の目標設定用紙があるのですが、これは自分で目標設定をして、後で本人が自己評価します。そうすると自己採点が5段階の一番上である◎に集中するのです。しかし、◎を取るためにイージーな目標設定をして達成したと言われても、全トヨタにとっては全くプラスにはなりません。だから私は今、一生懸命社員に言って回っているのです『意欲溢れるナイストライで、価値ある△を取れ』と。△というのは5段階の真ん中なのですが、やりがいのある目標設定をしたら、そう簡単に◎を取れるわけがありません。大失敗は困りますが、難易度の高い目標を定めて、最低限△で止められるような工夫をすることは、極めて価値が高いと思いますね」

この意識はトヨタが2015年に打ち出した「もっといいクルマづくり」というコンセプトにもつながっていく。良い評価を得たい人は、売れるクルマにばかり関与したがる。一方で売れるクルマは、実績をベースに求められる機能がハッキリしており、ユニークで面白いクルマ、新しいコンセプトのクルマが生まれにくい環境につながっている。これまでの評価方法では、例えばスポーツタイプのクルマの開発に関わっても、売上や利益に対する貢献は小さいため、社員のキャリアにプラスにならない部分があった。しかし、意欲的なナイストライを評価する制度が確立されれば、新しい物をやってみようという意欲が生まれるはず、ということだ。