ブームではなく、ベースとしての「健康」
ではなぜ「豆とハーブとスパイス」がこれからの時代のキーワードになりうるのでしょうか。そこにはまだ日本に浸透していないということ以外に大きな理由があります。それはこの3つの食材ジャンルは「おいしさと健康」の両立に大きく貢献する可能性があるからです(ちなみに、食品・飲料メーカーや外食関連企業のヴィジョンには、大抵この「おいしさと健康」に類似するフレーズがつきものです)。
健康は「一時的なブーム」や一部の高感度層の「志向」というレベルではなく、多くの人の食生活にとって「ベースとして求めるべき価値」となっています。とはいえ、いくら体に良くてもおいしくないものはイヤというのが人情です。そんな中、「おいしさと健康」を両立できる食材や料理には今後ますます関心が高まっていくことでしょう。であるならば、日本人がまだ使いこなせていない「豆とハーブとスパイス」には、大きな成長の伸びしろがあるはずなのです。
私はこの数年のパクチーブームには、こうした潮目の変化を感じるのです。つまり、「いよいよ『豆とハーブとスパイスの時代』が到来したか」という実感です。都市部ではパクチーはすっかり定着したように感じられます。となると、当然「次なる食材や料理」を探す動きが強まるでしょう。
それが世界的にもメジャーな「ひよこ豆」なのか(ひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」は中近東や地中海沿岸の定番料理)、スパイスをたっぷり効かせた紅茶の「チャイ」なのか、あるいはまだ日本人にはまったく未知なものなのかはわかりません。けれども、「おいしさと健康の両立」、そしてそのポテンシャルを感じさせる「豆とハーブとスパイス」を、次なる食のトレンドのヒントとしてぜひ頭の片隅に置いてみてください。
子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食コンサルタント。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/