机に部長級以上の電話番号一覧表
社員への指示が必要なときや問題が起きたとき、私はすぐに電話をかける。机の上には部長級以上の電話番号の一覧表が置いてある。携帯にも全部登録してあり、思い立てば朝や夜間でもコールするし、車中から連絡することも多い。
直接電話することで相手も事の重要性を認識し、次の対応も早くなる。と同時に、生の声でお互いの微妙なニュアンスも伝わるものだ。周囲は迷惑していると思うが、何ごとも先延ばしすると対応がダラダラ遅くなる。当然リスクも大きくなり、タイミングを逸することで問題も深刻になる。
当社は、リーマンショック後の2008年度に大幅な欠損を余儀なくされた。私自身、三井化学グループ立て直しの任を受け、09年に社長に就いた。その際、社員に訴えたのが「問題を先送りにしない文化の醸成」と「指示待ち文化の打破」である。
それまでの好業績も手伝って、社員1人ひとりはスマートで優秀なのだが、スピード感と荒っぽさに欠けていた。いわば“お公家さん”の体質になってしまっていたのだ。赤字体質脱却のため、我々は「高い志を持った戦う野武士集団」をめざした。
立て直しのためには、1人ひとりが果敢に行動するとともに、全員が同じ方向を向いていることが重要だった。特に組織が大きくなればなるほど、経営陣の考える時間軸と、社員の考える時間軸の間にズレが生じてしまう。
私は経営再建の目途を3年とした。半年で赤字から脱却し、2年後に黒字の定着、そして3年目には筋肉質の優良な企業集団に変革していこうという方針を立てた。現在、黒字の定着は、順調に進んでいる。文化の変革には多大な労力と時間を要するが、私自身確かな手ごたえを感じている。
世界の価値観は激変し、環境やエネルギーといった新たな分野が注目され、多くの企業がその新分野に注力している。そういった乱戦の中では、3年ぐらいで成果を上げないと間に合わない。いまはそんなスピード感が求められているように思う。