所長が語る「プロ」の仕事

「私が見ていて、この人たちはプロだなって思うことがありました。まあ、現場にいればいつでもスタッフをプロだなと思って見ているのですが、その時は違う意味でプロ根性を感じました。ある女優さんが真冬のボウリング場でロケをしたんです。女優さんは『広いから寒いんじゃないの?』と心配していました。制作部の人間は『大丈夫です。下が温浴施設になってますから暖かいです』と答えたんですよ。ところが、当日、行ってみたら、温浴施設は休館していた。ボウリング場も休館日だから借りることができたわけです。

私も一緒だったけれど、めっちゃめちゃ寒かった。入った瞬間に『寒いじゃない!』って、女優さんはまあ怒りますよ。制作部が暖かいと言っていたのにほんとに寒かったのだから。その時です。照明の親方が、いきなり着ていたジャンパーとセーター脱いで、シャツ一枚になった。『暑いな、ここ暑いな、みんな。暑いだろ、脱げ脱げ』って言った。その様子を見て、女優さんも苦笑いしながら仕事に入ってくれました。ああいった気合を見せられるとほんとプロが作っていることがわかります」

平均視聴率20%超というあり得ない数字

相棒シリーズの最高視聴率は2011年2月23日放送の「監察対象 杉下右京」で、23.7%を記録した(ビデオリサーチ関東地区調べ)。この時のシーズン9は視聴率がよく、平均視聴率が20%を超えるという、近年のテレビドラマではまずあり得ない数字だった。

「相棒」がこれほどウケたのは東映に脈々と流れる時代劇の作劇術が生きていることと、時間をかけて脚本を執筆しているから細部まで丁寧に作られているからだ。そして、水谷豊が演じる主人公、警視庁特命係の杉下右京の役回りはさながら大石内蔵助だ。水谷豊はアクションで魅せるわけではない。情報を集め、考え、推理する。彼は相棒と捜査チームを事件解決の方向へ向けてリードしていく。集団のリーダーなのである。辛抱して考えて、また考えて、少しずつ準備を整えていく。そして、少しずつ謎を解き明かした末に討ち入り、つまり、犯人逮捕に至る。

劇中、小料理屋に行き女将と話しをするのは山科にいた大石内蔵助が伏見、祇園のお茶屋へ通ったのと似ていなくもない。

水谷が演じる杉下は優秀なキャリア警察官だが、周囲から敬遠されている様子も平時の大石内蔵助に見えなくもない。「特命係」というセクション名自体が閑職と取れる。それは昼行燈ひるあんどんと陰で呼ばれていた大石を彷彿させる。やや牽強付会ではあるが、そこに東映の流儀を感じる。