なぜ北海道が「実験場」となるのか

北海道には、他地域に先駆けて直面する社会課題が集中している。「課題先進地」としての側面を持つこの地では、急速に進む人口減少と高齢化、車社会を前提とした広域な生活圏、中心部以外での小売店の撤退、冷涼な気候による季節ごとの需要の偏りなどが見られる。

こうした環境は、都市部のモデルでは対応しきれない地域課題を浮かび上がらせる一方で、新しいサービスやフォーマットの実験場として極めて有効だ。北海道で通用するモデルは、いずれ他の地方都市でも機能しうる――この地が「日本の未来の縮図」として、各社から注目を集めてきたのも無理はない。

2004年には函館地区でセブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートの3社による物流の共同配送実験が行われており、北海道は「持続可能な流通モデル」のテストベッドとしても機能してきた。2022年2月にも内閣府のスマート物流サービスの枠組みのもと、同じく函館地区で3社による共同配送の実証実験が実施された。基幹センター間の横持ち輸送や過疎地店舗への配送共同化などを検証し、物流効率やCO₂排出削減の成果も報告された。

地元の野菜売り場。これまでのセブンではなかった光景。
筆者提供
地元の野菜売り場。これまでのセブンではなかった光景。

コンビニの未来へのカギは社会インフラ化か?

コンビニ各社の取り組みは、コンビニ業態が飽和状態を迎える中で、次なる市場や役割を自ら掘り起こそうとする挑戦である。

セブンの南7条店では、野菜や冷凍肉が並ぶ一方で、観光客向けのガンプラが並ぶ。ローソンは稚内の港町で地元事業者と連携しながら食のライフラインを守る。セコマは道東や道北の小規模町村にも根を張る。

地元で人気のジンギスカンの肉などが並ぶ
筆者提供
地元で人気のジンギスカンの肉などが並ぶ

単なる利便性や商品力だけでは差別化できない時代に入り、地域密着型の価値創出が競争軸となりつつある。

白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)
白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)

もはや、コンビニとは単なる「便利な小売店」ではない。地域の暮らしに入り込み、生活課題の受け皿となる“社会インフラ”へと進化している。

そしてその進化の最前線が、北海道なのだ。コンビニの未来を知りたければ、北海道を見よ。セコマの成功、セブンの実験、ローソンの挑戦、ファミマの再構築――それらはすべて、変わりゆく日本社会における「地域密着流通」の新しい可能性を指し示している。

飽和市場にあってなお、挑戦は生まれる。冷凍ジンギスカンと夕張メロンの並ぶ売場は、未来のコンビニの予告編かもしれない。