講話がもっとも役に立つ
学園の特徴の7番目は講話だ。同校では人間について教える授業があり、講話と呼んでいる。専門部では毎週、金曜日に行う。時間は少なくとも2時間。午前、午後に続けて講話を行うことだってある。講師は外部の専門講師ではない。トヨタの現役社員だ。
話す内容は多岐にわたっている。社会人としてのマナー、実際の仕事における問題解決の方法、トヨタ生産方式とは何か、トヨタ生産方式を通じたカイゼンのやり方……。
講話と聞くと精神論と思いがちだが、学園の講話は精神論ではない。そして、現役社員の自慢話でもない。どちらかといえば失敗談、開発における苦労話が多い。
卒業生たちに「学園で覚えている授業は?」と訊ねると、大半の人間は「講話です」と答える。そして、「自分がトヨタに入社して講話で聴いたことがもっとも役に立った」とも教えてくれた。
身近なこと、小さな問題の解決について社員の目線で話すことが講話なのだろう。
「わからない」は上司が悪い
学園の授業や実習で生徒が「わかりません」「ちょっとわかりづらいです」と答えたとする。一般の学校ならば教師は「どうして、わからないんだ。あれほど説明したじゃないか」と言う。それから、もう一度、教えようとなる。ただし、教え方は前と同じだから、生徒は何べん聴いてもわからない。
トヨタ、学園では「わからないと答えた部下(生徒)が悪いわけではない」というのが共通の理解だ。部下に物事を理解させることができなかった上司が悪いとされる。
部下が「わかりません」と答えたとする。トヨタの上司であれば、「どこがどのようにわからなかったのか?」を部下に訊ねる。そうして、わからなかった箇所を特定して、あらためて説明する。もしくは説明の仕方が悪いと言われたとする。その場合は、違う説明の仕方をする。あるいは、説明を受ける部下が理解できる用語だけで説明する。たとえ話が「古い」と言われたら、昭和の出来事や人物を引き合いに出すのではなく、令和の出来事や人物をたとえ話に使う。


