寂しいのは常に「いい人の仮面」や「仕事の仮面」をつけたまま、「本当の自分」として人とつながっていないからで、自業自得とも申せます。

善人ぶって口先だけの耳当たりのいいことを言わないようにし、同時に口先だけの人に友情を期待するのをやめましょう。ブッダは「そんな人に対しては、友ではないと幻滅しておくとよい」と語っています。もしも仮面のつき合いでしかないのなら、いっそのこと独りでいるほうが清々しいものです。

本当のつき合いにおいては、体を動かすことを通じた交流もお勧めです。山登りやスポーツなど、身体的な行為を共有することで脳は相手に好意を抱きます。共に食卓を囲むことも有効で、家族との会話を増やしたい、人と仲良くなりたいのなら、一緒にごはんを食べるようにするのが最も無理のない方法でしょう。

なお男性は、仕事のポジション=その人の価値と捉える時代が長かったために、「本当の自分」で人とつながりにくくなっていると思われます。高い役職についた場合、その地位が持つ権力に惹かれて寄ってくる人が少なくありません。そのうちに人が寄ってくるのが自分の魅力のためなのか、役職のためなのかがわからなくなってしまうもの。社会的に偉くなるほど本人も自分の支配力を誇示しがちになり、ますます権力に吸い寄せられる人を周囲に集めてしまいます。

近年は役職につく女性も増えていますが、立場の魅力を人の魅力だと錯覚してはなりません。立場に関係なく、他人が自然と慕いたくなるような心を持つことが、寂しさから脱却する最大の手段です。そのためには欲望や怒りに突き動かされやすい心を調教すること。自分の心を見つめ、コントロールすることこそが真にかけがえのない財産になります。

ブッダの言葉

恥知らずにも、
「私はあなたの友だちだよ」と
口先で言いながら、
自分にできることを君から
頼まれても、「いや……
今はたまたまアライグマを
育てるのが忙しくて」などと
理由をつけて何もしない人。
こんな人のことは
「実は友だちじゃない」と
幻滅しておくとよい。

(経集253)*『超訳 ブッダの言葉』095

※記事中「ブッダの言葉」は、すべて小池龍之介編訳『超訳 ブッダの言葉』(ディスカヴァー刊)による。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。2003年、ウェブサイト「家出空間」を開設。現在は「正現寺」と「月読寺」(東京・世田谷)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』など著書多数。
(構成=岩原和子 撮影=向井 渉)
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