必要なのは、子どもたちのレジリエンスを育んであげる先生

これまでは、みんながバランスよく全部のことが平均的にできるようになれば、会社にみんなで入ってみんなで働いて大量生産をしていればいい時代でした。

ところが、これからの時代はAIやAGI、ロボットなどが仕事をするようになれば、人間は何か尖った個性がなければ生きづらくなってしまいます。

子どもたちの尖った部分を見出すのはAI先生ではなく、人間の先生の重要な役割だと私は考えています。

そのときに大事なこと。それは、子どもたちを失敗から立ち直らせることができる先生の存在です。

数学の公式と科学の画面を分析するAIヒューマノイドロボット
写真=iStock.com/NanoStockk
※写真はイメージです

AGIが実現すれば、AGIが一人ひとりの子どもにとっての強力なパートナーであり、アドバイザー的な存在となり得るでしょう。

「キミはこれが得意だからこうした仕事に進むべきだ」とか、「キミは運動能力が高いけどプロ野球選手になれる確率は20%だからおすすめしない」など、AIがその子の個性や能力に合わせた分析や判断をしてくれるようになるでしょう。

ところが、私たち人間の考えや行動は、すべて数式や科学的根拠だけで決まるものではありません。私たち人間は、時には「理屈じゃない」といって開き直るときがありますよね。「根拠がなくてもこれをやりたい」という時が誰にでもあるはずです。

竹内薫『スーパーAIが人間を超える日 汎用人工知能AGI時代の生き方』(プレジデント社)
竹内薫『スーパーAIが人間を超える日 汎用人工知能AGI時代の生き方』(プレジデント社)

そういった、いわば「人間臭い」部分というのがこれからの時代には必要で、合理的ではなくとも挑戦したい、そして、たとえ失敗をしても、失敗から立ち直る力を育てるのはやはり人間の先生だけが子どもたちにしてあげられるものなのです。

たくさん挑戦して、たくさん失敗をして、それによって心を強くしていく。次もまた新たな挑戦ができるように、粘り強く失敗から立ち直る力、いわゆるレジリエンスを育んであげてほしいのです。

いまの世の中で大人たちを見ていると、すごく才能があるのに挑戦しないという人が多いと感じます。それは、子どものうちにこのレジリエンスを育んでこなかったからです。

子どものうちに心が強くなっていくと、「あのときの失敗に比べれば、これはたいしたことじゃない」という考え方ができるようになります。それは学校で先生が子どもたちに体験させてあげるのがベストだと私は思っています。

(構成=神原博之)