突出した才能はどう生まれるのか。明治大学文学部教授の齋藤孝さんは「日本の野球界のように、個性を楽しみ伸ばし合う雰囲気があれば才能もレベルアップする。出る杭を叩くのではなく、むしろ変わっているところを引き出すことが大事だ」という――。

※本稿は、『座右の一行 ビジネスに効く「古典」の名言』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

投球する大谷 米大リーグ・大谷
写真=共同通信社
2季ぶりに投打「二刀流」が復活した米大リーグ、ドジャースの大谷翔平=2025年6月16日、ロサンゼルス

前例のないチャレンジがもたらすもの

自分はこんなに頑張っているのに、報われないし、周囲は認めてくれない。そんな不満やストレスを感じた経験は誰にでもあるでしょう。

取り組んでいるのが前例のないことやリスクの高いチャレンジであるほど、世間は「そんなことをして意味があるのか」「どうせうまくいかない」と批判的な目で見るものです。

誰からも理解されない状況で、チャレンジを続けるのは簡単なことではありません。それでも諦めずに挑戦した者だけが、より高みへと上り詰め、さらには周囲を巻き込んで世の中を変えていくことができる。

それを寓話的に語ったのが、米国の作家リチャード・バックの小説『かもめのジョナサン』です。1970年に発表された本作は世界的ベストセラーとなり、日本でも五木寛之さんが訳を手掛けて大ヒットしました。

成功したのに追放された「かもめのジョナサン」

小説の主人公は、ジョナサン・リヴィングストンの名を持つ一羽のカモメです。彼は群れの中で孤高の存在でした。仲間のカモメたちが今日を生き延びるために餌をとることだけを考える中、ジョナサンは飛行術を極めようと練習を重ねます。

青い空を飛んでいるカモメ
写真=iStock.com/mktphoto
※写真はイメージです

海面ギリギリに飛ぶ低空滑空を何百回も繰り返したり、300メートルの高さから急降下してみたりと、誰も試みたことのない速度や角度に挑戦して自分の限界を突破しようとするのです。

「すべてのカモメにとって、重要なのは飛ぶことではなく、食べることだった。だが、この風変りなカモメ、ジョナサン・リヴィングストンにとって重要なのは、食べることよりも飛ぶことそれ自体だったのだ」

カモメ社会においてジョナサンの考え方はあまりにも異質で、実の両親でさえも練習をやめさせようとしますが、彼は飛行術の研究を続けます。空中で安定を失ったり、海面に激突したりと、何度も失敗を繰り返しながら、ついに高度な飛行技術を身につけました。

ところが群れのカモメたちは、食べることより飛ぶことを重視するのは無責任な行いだとして、ジョナサンを一族から追放します。

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