※本稿は、『座右の一行 ビジネスに効く「古典」の名言』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
前例のないチャレンジがもたらすもの
自分はこんなに頑張っているのに、報われないし、周囲は認めてくれない。そんな不満やストレスを感じた経験は誰にでもあるでしょう。
取り組んでいるのが前例のないことやリスクの高いチャレンジであるほど、世間は「そんなことをして意味があるのか」「どうせうまくいかない」と批判的な目で見るものです。
誰からも理解されない状況で、チャレンジを続けるのは簡単なことではありません。それでも諦めずに挑戦した者だけが、より高みへと上り詰め、さらには周囲を巻き込んで世の中を変えていくことができる。
それを寓話的に語ったのが、米国の作家リチャード・バックの小説『かもめのジョナサン』です。1970年に発表された本作は世界的ベストセラーとなり、日本でも五木寛之さんが訳を手掛けて大ヒットしました。
成功したのに追放された「かもめのジョナサン」
小説の主人公は、ジョナサン・リヴィングストンの名を持つ一羽のカモメです。彼は群れの中で孤高の存在でした。仲間のカモメたちが今日を生き延びるために餌をとることだけを考える中、ジョナサンは飛行術を極めようと練習を重ねます。
海面ギリギリに飛ぶ低空滑空を何百回も繰り返したり、300メートルの高さから急降下してみたりと、誰も試みたことのない速度や角度に挑戦して自分の限界を突破しようとするのです。
カモメ社会においてジョナサンの考え方はあまりにも異質で、実の両親でさえも練習をやめさせようとしますが、彼は飛行術の研究を続けます。空中で安定を失ったり、海面に激突したりと、何度も失敗を繰り返しながら、ついに高度な飛行技術を身につけました。
ところが群れのカモメたちは、食べることより飛ぶことを重視するのは無責任な行いだとして、ジョナサンを一族から追放します。



