Aさんに無関心な夫と息子
「間取りは、そこに住む家族の人間関係を映す鏡である」――。
建築士として数多くの住まいを見てきて、私は確信するようになりました。家族それぞれが“専有空間”を持ちたがることで、空間の再配分は進まず、その結果、家庭の中でもっとも日常を支えている人(多くの場合、それは妻)が、居場所を失ってしまう。しかもこれは“当たり前”無自覚の構造”であることが多いのです。Aさんのご家庭でも、夫も息子も、「妻が/母親がどこで寝ているのか」を真剣に考えたことがなかったと言います。
日本の住まいの設計思想には、「夫の書斎」や「子ども部屋」という概念はある一方で、“妻のための空間”という視点が驚くほど欠けています。家を建てるときに優先されるのは、「子どもに個室を」「夫には趣味スペースを」「収納を確保しよう」、それらすべての後に、キッチンとリビングが割り振られ、その中に“妻の場所”があるかどうかは考慮されません。あったとしても「家事室」など労働の場であって、「家の中で一番頑張っている人」が、一番ないがしろにされる、それが日本の家庭空間に潜む、見えにくい構造的格差です。
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