「王将に学べ」課題は味のローカライズ
次に指摘されるのが、「1杯1000円の壁」だ。確かにインフレ下で価格転嫁が進みつつあるとはいえ、ラーメンというカテゴリーには庶民価格のイメージが根強い。気軽に食べられる存在であるべきラーメンが、1杯1200円、1300円と上がっていくと、一定層の客離れを招くリスクが現実味を帯びる。とくに地方都市や郊外では、価格に対する感受性がより高く、慎重な価格設定が求められる。
また、チェーン展開時の難しさも課題だ。ラーメンは地域色が強く、東京、博多、札幌と、好まれる味がまったく異なる。一律展開すれば「味が薄い」「こってりしすぎ」といったミスマッチが起きやすい。
また、ラーメン一杯の完成度にはスープ炊き、タレの調整、麺茹で、盛り付けなど細かな職人技が影響する。これを標準化し、全国均一のクオリティで提供するのは想像以上に難易度が高い。たとえば、「一風堂」の力の源HDは、国内展開と海外展開とで微妙にスープの味を調整している。ギフトHDはブランドごとに店舗オーナーに一定の自由裁量を持たせ、ローカライズを図る戦略をとる。こうした「個店化」の成功例が王将フードサービスで、オープン当初から個店が独自メニューを作り地元客の獲得に成功している。
いかに「均質性」と「個性」のバランスをとるか──。これがラーメン業態をチェーン展開する際の最大の壁となる。
家系、ちゃん系、二郎系…「食のコンテンツ」の魅力
外食市場がインフレと原材料高騰に揺れるなか、ラーメン業態はその存在感を一段と強めている。倒産リスクや価格転嫁の難しさという現実を抱えつつも、大手外食企業や新興勢力はなお、ラーメンへの投資を加速させている。
理由のひとつは、ラーメンが「人を惹きつける食のコンテンツ」になりつつあるからだ。魚介系、鶏白湯系、豚骨系、つけ麺系、二郎系、家系、ちゃん系──。無数のバリエーションがあり、しかもそれぞれに熱狂的なファン層がいる。単なる商品ではなく、「ブランド」や「体験」として育てられる土壌がある。
外食大手にとって、ラーメンは単なる一業態ではない。顧客を惹きつけ、ロイヤルティを高め、海外にも拡張できる「強いコンテンツ」なのだ。
とはいえ、ラーメン市場に安易な楽観は禁物だ。
日高屋(ハイデイ日高)のように、中華そば1杯420円という圧倒的な価格競争力を維持しながら、なおかつ利益を確保しているチェーンも存在する。インフレとはいえ、ラーメン1杯1000円超えに抵抗感を抱く層も確実に存在する。
そして、ラーメンという食べ物は地域性、個性、職人性に根ざすため、全国一律展開が難しいという構造的なハードルもある。それでも、各社はラーメンに挑み続ける。インフレ耐性、SNS拡散力、海外展開力、そして文化としての広がり。ラーメンが持つ多様な可能性は、今なお衰えていないからだ。一杯の丼に、濃厚な夢とリスクを詰め込みながら――店長たちは今日も、新しいラーメン店の暖簾を掲げる。

