「町田商店」「豚山」は国内1000店体制目指す
新興勢力も負けてはいない。ギフトHD(町田商店、豚山)は、横浜家系ラーメンを軸にフランチャイズ型で急成長。豚骨醤油の「町田商店」、濃厚背脂ラーメンの「豚山」、油そば専門の「元祖油堂」などブランドを使い分け、2027年10月期には国内1000店体制(現在は直営約250店、プロデュース店約580店)を目指す。
ギフトHDは、「ラーメンはまだ大手3社で1割程度の市場シェアしかない。成長余地は大きい」と分析する。各社のM&A対象が単なるラーメン店ではない点だ。買収先ブランドは、魚介系、豚骨系、鶏白湯系、味噌系、エビ出汁系、背脂系、つけ麺系とバラエティに富む。まさに「ラーメンの多様性」を意識しながら、企業は自らのポートフォリオを拡充している。
背景に「1杯1000円超え」現象が
大手外食企業が、リスクを承知でラーメン業態に乗り出す背景には、いくつかの明確な理由がある。
第一に、インフレ耐性の強さだ。コスト高騰に直面するなか、ラーメンは比較的価格転嫁がしやすい商材とされている。たとえばギフトホールディングスは、直近3年間で客単価を約25%引き上げたが、客足の大きな減少は見られなかった。
「1杯1000円」という価格帯はかつて心理的な壁とされたが、インフレ進行とともに消費者の受容性も変わってきた。実際、帝国データバンクによれば、ラーメン1杯の価格帯が1000円を超えても一定の客層が定着している事例が増えている。
SNSとの相性がいいラーメン
次に、ラーメンが持つ体験型コンテンツとしての強みだ。いま外食産業では、単なる「食事」以上の「体験」や「SNS映え」が求められている。ラーメンは見た目のインパクトが大きく、個性的なビジュアルが拡散されやすい。
とろりとした鶏白湯スープ、背脂が光る豚骨ラーメン、魚介香る極太つけ麺、赤く輝く台湾まぜそば──それぞれがひとつの「物語」を持ち、若い世代を中心に熱心な支持を集める。「丸亀製麺」を手掛けるトリドールHD傘下の「ずんどう屋」は、背脂とんこつラーメンの濃厚なビジュアルと、SNSキャンペーンを組み合わせて集客を図っている。
ラーメン市場には「家系」「二郎系」「ちゃん系」といったサブジャンルごとに熱狂的な固定ファン層が存在する。横浜家系なら豚骨醤油+ライス、二郎系なら極太麺と山盛り野菜、ちゃん系なら町中華的な醤油ラーメン──。それぞれが異なる「食体験」を提供しており、単なる価格競争に陥りにくい。こうした多様性と支持基盤の強さも、外食大手にとってラーメン業態を魅力的な投資対象にしている。
