ヨーカ堂なども冷食販売に注目

ライバル各社も冷凍食品に注目する。イトーヨーカ堂はPB「EASE UP(イーザップ)」を立ち上げ、冷凍食品の品揃えを強化。既存店の改装を通じて冷凍食品売場を拡大し、総菜売場近くに配置するなど利便性を高めている。ライフコーポレーションは2024年10月に高井田店(大阪府)をリニューアルオープンし、「簡単で、すぐに食べられる」をテーマにした冷凍食品を強化した。定番のからあげやワンプレートメニューなど、単身者や子育て世代のニーズに応える。

過去最高売上のなか、イオンが狙うもの

2023年の国内冷凍食品市場は過去最高の1兆2472億円。2024年も伸長傾向にあり、冷凍野菜やワンプレート商品、スイーツが好調を維持している。

一方で、「枝豆は高騰して販売が鈍化」「焼きおにぎりは米不足で想定外」など、市場には変動要素も多い。そうした中、イオンの戦略は「生活者の変化に即応するスピード」と「店舗×商品開発の一体化」が武器となる。

日本の冷凍食品市場は今後も成長が続くと見られている。特に家庭用冷凍食品は、人口減少と単身化、高齢化という構造変化のなかでニーズが高まり、保存性・簡便性・多様性の観点から再評価が進む。

一方で、課題もある。エネルギー価格の高騰は冷凍物流コストの増加につながり、価格設定に影響を与える。また、フードテックや冷凍技術の進化といった新たな競争軸にも、対応が求められる。

その中でイオンが描く“冷食革命”は、単なる商品開発の話ではない。売場改革、PB戦略、物流設計、環境対応など、小売業全体の構造改革と密接に結びついている。「冷凍食品にきゅうり?」という違和感はイオンのねらい通り。消費者の記憶に残る“意外性”のある商品を打ち出すことで、冷凍食品を“副菜や弁当の補助”という位置づけから“主役”へと押し上げる狙いがある。

イオンを追いかけヨーカドーやライフも「冷食」強化中。
写真=筆者提供
イオンを追いかけヨーカドーやライフも「冷食」強化中。

冷凍食品が産声を上げたのは1970年の大阪万博。期せずして2025年は大阪・関西で万博が再び開かれる。冷凍食品が“選ばれる主役”としての道を歩んでいるのは時代の要請だ。イオンの冷食戦略は、単なる新商品投入を超えて、小売業の未来の可能性そのものを提示している。

冷凍庫と冷凍食品が“主役”になる時代、あなたの冷凍庫には何が入っているだろうか?