今月5日、龍谷大平安高(京都市)は、硬式野球部の部員2人に体罰をおこなった原田英彦監督(64)が退職したと発表した。ライターの広尾晃さんは「メディアでは原田氏を擁護する声が散見されたが、それはおかしい。学生野球界は早急に『体罰=一発アウト』という規定を作るべきだ」という――。
龍谷大学平安中学校・高等学校、京都市下京区大宮通
龍谷大学平安中学校・高等学校、京都市下京区大宮通(写真=Own work/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

甲子園の常連校で起きた「部員体罰」報道

京都の龍谷大平安高と言えば、旧称の平安高時代から、全国屈指の野球強豪校として知られてきた。

夏の甲子園の京都府大会には旧制平安中学時代の1916年に初出場。以後、春の甲子園には42回、夏は34回の出場を誇る。全国優勝は春1回、夏3回。

出身選手には、元阪神監督の金田正泰、殿堂入りした広島の衣笠祥雄など錚々たる名前が並ぶ。現役選手には西武の炭谷銀仁朗、楽天の中島大輔、ロッテのドラフト1位ルーキー西川史礁みしょうなどがいる。

この名門中の名門、龍谷大平安高の原田英彦前監督が、部員に対して暴力をふるったと報じられた。

原田前監督は2月中旬、課題を提出していなかった硬式野球部の部員2人を寮に呼び出した。

朝日新聞によれば、部員1人の頭を手のひらで、頭と肩、のど付近を紙製ノートで10回以上たたいた。もう1人の部員には手のひらで頭を5回ほどたたいたという。(2025年3月5日朝日新聞

翌日、このうちの1人が「監督から暴力を受けたため登校できない」と学校側に申告し、暴行が明らかになった。病院の診断で、この部員は打撲で30日の通院が必要だとされた、一時期、登校できていなかったが、現在は復帰しているという。

学校の対応は迅速だったが…

学校側は、高校は暴行の発覚直後に日本高野連に報告するとともに、事件について公表し、懲戒処分の手続きを進めていたが、事実関係を精査するとしていったん取り下げた。これを受けて、日本高野連は3月4日に開催される日本学生野球協会審査室会議への処分申請を見送るとした。

原田前監督は事件後、自宅待機処分となっていたが2月17日に退職届を提出。3月2日付で高校職員としての退職が決まり、監督も辞任した。

3月5日には龍谷大平安高の山脇護校長が記者会見し、「この度、本校硬式野球部の監督が部員に対して体罰を行ったということで多大なご心配ご迷惑をお掛けしましたこと、誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

原田前監督は、今年度での退任が予定されていたというが、それに先立って自ら辞職したのは、これによって学校が学生野球協会から処分を受けることを回避したいという意向もあったと思われる。

退任に際して「生徒を何とか活躍させたいという思いが強く、体罰に至ってしまいました。大変申し訳ないことをした。学校に戻って野球を続けてほしい」と話した。