学生野球界の不思議な処分

これまで学校は、行き過ぎた暴力に対して教師に注意することはあったが、譴責けんせきなどの制裁処分を科すことは、ほとんどなかった。

体罰の禁止は、1947年に施行された「学校教育法」に明記されている。

学校教育法第11条

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

しかし実際には体罰を容認するような教育が80年近くも野放しにされてきたのだ。学生野球界の体罰に対する処分も極めて甘い。

日本学生野球協会審査室は、日本高野連から不祥事を起こした選手、指導者などについて処分申請があれば、協議をして処分を決めている。

2024年11月と25年1月の処分発表から暴力、体罰に関するものをピックアップしてみた。

・益田東(島根)はコーチ(非常勤講師)の部内による体罰により、24年12月20日から1カ月の謹慎処分。

・東洋大姫路(兵庫)のコーチ(非常勤講師)は部内での暴言と体罰により、24年9月21日から3カ月間の謹慎処分。

・船橋北(千葉)は監督の部内での体罰、不適切発言と不適切指導、報告義務違反により、24年10月17日から4カ月の謹慎処分。

・金沢龍谷(石川)の監督は部内での体罰と暴言、及び報告義務違反で24年10月2日から1年間の謹慎処分。

暴力よりもルール違反の方がはるかに厳しい

処分は1カ月から1年の謹慎処分となっている。コーチよりも監督の処分が重い。また報告義務違反があると謹慎期間が長くなるようだ。

ただ高校野球では12月から2月末までがオフシーズンになる。この期間を含む謹慎処分は、ペナルティーとしては非常に軽微だと言える。

その一方で、暴力、体罰ではない処分発表の例をあげる。

早大学院(東京)の監督(68歳、外部指導員)は中学生の練習参加による規定違反と、中学生との接触ルール違反により24年10月5日から無期謹慎処分。

中学生が高校の練習に無許可で参加するなど、接触ルールに違反した場合には、その監督の指導者生命が終わるような厳しい処分を科しているのだ。

体罰、暴力よりも、ルール、規定違反の方がはるかに厳しい処分という部分にも、現在の日本野球の価値観が見て取れる。

阪神甲子園球場
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日本高野連、学生野球協会は今年2月、スポーツ庁スポーツ団体のガバナンスコードの要請に対応して、「処分基準」を策定するとともに、それに関連する規則などの策定や一部改訂を行った

指導者の不適切な言動の内容や謹慎期間などを明文化。対外試合禁止の期間にはオフシーズンを含めないなど、処分の公平性、整合性を高めた改定となっている。また具体的な不祥事を例示して、謹慎期間の規定をし直している。

ただ、今回の改定を通じても暴力、体罰を厳罰化するような動きは見られなかった。