むしろフランクに関わったほうがいい

もちろんハラスメント対策には、「何を言ってはいけない」、「これをやってはいけない」と、禁止事項がとても多くあります。

でも、会社や上司も言ってはいけないことを意識しすぎて、疑問を挙げてくださった方のようにむしろ萎縮してしまい、業務に差し支えるように思える場合もあるほどです。

研修のやり方はいろいろありますが、最近私が担当している研修では、部下と関わらないのではなくて、むしろ「もっとフランクに関わることで関係性を作っていきましょう」という対策を教えるようにしています。

結局のところ、日頃から信頼関係ができているかが重要なのです。それができていないと、ちょっとしたことから過剰に反応して収まらなくなってしまうことが多いのです。ですから、まず関係性づくりをすることが、有効な対策になります。

具体的に言うと、「神経質になりすぎない」ことが大事です。気にしすぎてがんじがらめになっていたところを少しゆるめて寛容になること。そして関係を一方通行にしないことです。

通常、上司から部下への指導や注意は、「上から下へ」行くものです。業務を行う上で必要なものですから、むしろ毅然として行う必要がありますが、そうはいっても一方通行になってしまうとハラスメントだと言われかねません。

伝えるべきことは伝えながら、相手の話もしっかり聞き、受容する、受け止める。そうした姿勢で交流することが何よりの予防策になります。

オフィスで話をする3人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

「4H」が職場のコミュニケーションを悪化させる

大切なのが、私は「4H」と呼んでいるのですが、すべてHで始まる言葉で「比較、否定、非難、批判」の4つに注意することです。

〈4Hの具体例〉
比較「○○さんはできたのに」と比べること。
否定「それじゃ全然ダメ!」と否定されること。
非難「あなたが悪いよね。どうしてできないの」とミスや欠点を責めること。
批判「いつもそうだよね。非常識じゃない?」と評価して、判定をくだすこと。

日常会話や部下から報告・連絡・相談を受けるときでも、これを避けることでハラスメント対策になります。

しかし実際には、「パワハラなんて言われちゃったら困るよなー」などと茶化しながら、無自覚にハラスメントの行為者になる場合もあれば、威圧的な態度を変えず、よそはよそ、という態度を変えない人もいます。職を失いたくなかったりとか、プロジェクトから外されたくなかったり、そこに力関係が存在するので、された側も黙認していたりします。

悪質なのはハラスメント対策の義務化を逆手にとって、「それってパワハラじゃないですか?」と脅すように「逆ハラスメント」をする人もいます。

そうした芽をいかにつんでいくか、それを管理する側がしっかり知識を備えているかが重要です。