万博開催への相次ぐ疑問と批判
空気が変わったと感じたのは、2023年7月だった。
各国が独自に建てるパビリオンの建設遅れが表面化し、国民から大きな批判を招いた。さらにその後、公費が3分の2を占める会場建設費の2回目の上ぶれが決まり、当初想定の2倍に近い最大2350億円に膨らんだ。建設の現場では爆発火災が起きた。
近年はインターネットが発達し、世界中の情報を手軽に知ることができる。海外旅行も昔より普及した。そんな時代に万博を開く意義についても、疑問の声が相次いだ。
細胞(赤色)と水(青色)をモチーフにした公式キャラクター「ミャクミャク」が腕を突き上げるポスターは街中にどんどん増えたが、開催に向けた機運はなかなか高まらなかった。
大阪で強い地盤を誇る維新も、万博への批判が一因となって低迷する。
府内の首長選などでは、公認した候補が相次いで敗れた。大阪維新の会を母体とする国政政党・日本維新の会は一時、野党第1党をうかがう勢いだったが、立憲民主党や国民民主党が躍進した24年10月の衆院選で、議席を減らした。
巨額の公費をつぎ込んだ成果のゆくえ
大阪・関西万博は2025年4月13日、ついに開幕する。
有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会……。パビリオンでの展示以外にもさまざまな催しがあり、「明るいニュース」を見聞きする機会も増えると思う。関西出身の私にとっても、大阪への注目が高まるのは嬉しいことだ。
一方で、巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われる。人口減が急速に進むなか、お金や人材といった限られた資源の使い道は、これまで以上に真剣に考えないといけない時代だ。東京五輪をめぐる談合事件を受け、巨大イベントの開催に厳しい視線が注がれている状況でもある。
万博が終われば、主催側は「成功」をしきりにアピールするだろう。だがそれを額面通りに受け取って良いのか、公費に見合うイベントだったのか、貴重な機会を十分に生かし切れたのかは、一人ひとりが考えるしかない。