「天下り規制」を無力化する仕組み
官僚に対して世間が厳しい目を向けるようになったことが原因で、2008年12月31日に改正国家公務員法が施行されて、天下りに対する規制が大幅に強化された。
それまでの再就職に関する規制は、離職後2年間、離職前5年間に在職していた国の機関と密接な関係のある営利企業の地位への再就職が原則禁止されていたのみだった。
ところが、改正法によって、
②現職職員による利害関係企業等への求職活動を規制
③退職職員の働きかけを禁止
これらの規制が新たに開始されたのだ。
【再就職に関する規制等】
・再就職あっせんの禁止……各府省等職員が職員又は職員であった者について、営利企業等に対し再就職のあっせんを行うことは禁止されています。
・現職職員の求職活動規制……職員が利害関係企業等に対して求職活動を行うことは禁止されています。
・退職職員の働きかけ規制……再就職者が、離職前5年間(それ以前の課長級以上の職への在職期間も含む。)の職務に関し、離職後2年間(自らが決定した契約・処分については期限の定めなく)、在職していた局等組織等に属する役職員に対して働きかけを行うことは禁止されています。
もちろん官僚にとって、天下りは自分たちの生涯報酬を高めるための最大の手段だから、そう簡単に利権を手放すわけにはいかない。
だから、2008年の国家公務員法改正には、規制を無力化する仕掛けがこっそり仕組まれていた。
まず、天下りそのものを禁止したのではなく、天下りの「あっせん」を禁じたことだ。また、あっせんに関しても、新たに設立した「官民人材交流センターへ一元化」しただけで、禁止ではなかった。そのほかにも規制逃れのさまざまな抜け穴があるザル法を作ったのだ。総務省が公表している再就職者数の推移を見ても、法改正後の数年間は混乱のために天下りは減っているものの、その後、見事に復活し、最近ではむしろ増えているのが現状だ。
それでも、かつてのように許認可権を盾に強引に天下りポストを所管業界に要求し、再就職先での極端な厚遇を得ることが難しくなってきていることは間違いない。
天下りシステムは量的縮小ではなく、質的低下を招いているのだ。
財務官僚は治外法権
大蔵省のノーパンしゃぶしゃぶ事件をきっかけに国民の怒りが爆発したことに端を発した公務員制度改革で、官僚の生態系は大きく変化した。
だが、現実には改革の波にほとんど影響を受けなかった官僚がいる。それが皮肉にも財務官僚だった。極論すると、いまや官僚は従来型の利権を維持・拡大し続ける財務官僚と、利権の多くを失った財務省以外の官僚に二極化していると言っても過言ではないだろう。
たとえば、財務省はいまだにありあまるほどの天下り先を維持しているのだが、天下り先の処遇もけた違いだ。