「大蔵省」から「財務省」へ

ノーパンしゃぶしゃぶ事件は、官僚優遇システムにも甚大な影響を及ぼした。

たとえば、大蔵官僚には20代後半で税務署長を務める人事慣行があったが、そのことが過剰なエリート意識を生んだり、接待漬けの温床になっているとの批判が高まり、1999年度から「原則として税務署長に出すのは35歳以後」と人事方針が変更されたのだ。大蔵官僚の生態系にも少しずつ変化が生まれてきた。

そして、ある意味で行政改革の総仕上げとなったのが、森喜朗内閣の自公保(自由民主党、公明党、保守党)連立政権の下で2001年1月に実施された中央省庁の再編統合だった。

この改革で、厚生省と労働省が合併して厚生労働省になったり、運輸省、建設省、国土庁、北海道開発庁が合併して国土交通省になるなど、1府22省庁が1府12省庁に再編された。

ノーパンしゃぶしゃぶ事件の主犯である大蔵省も無傷ではいられず、財金分離で金融庁が別組織として分離され、何より「大蔵省」という大蔵官僚にとって愛着のある組織名が「財務省」に変更されたのだ。

中央省庁再編の目的は、表向きは「縦割り行政による弊害をなくし、内閣機能の強化、事務および事業の減量、効率化」だったが、その真意は、官僚たちの利権を厳しく取り締まることだった。

日本の財務省
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行革で激減した官僚の特権

組織再編のほかにも、官僚優遇を支えたさまざまなシステムが変更されることになった。

たとえば、公務員住宅の家賃については、東京23区の場合、2014年度から独身用8600円が1万3400円(56%アップ)、係長・課長補佐用2万7900円が4万8100円(72%アップ)、幹部用6万5700円が11万6300円(77%アップ)と、大幅な値上げが行なわれたのだ。

毒まんじゅうに関しては、統計など存在しないが、それまで日常茶飯事だった付け届けや接待は激減し、女性をあてがうことはほとんどなくなった。

ただ、2024年7月10日、海上自衛隊の潜水艦修理にからんで川崎重工業が海上自衛隊員に金品や飲食を不正に提供していた疑惑で、川崎重工が架空取引で捻出した裏金が年間約2億円にのぼることが明らかになったことからもわかるように、毒まんじゅうが完全に消えたわけではない。ただ、私の実感でいうと、けた違いに少なくなったことは間違いないと思う。