昼ドラマの緊迫感を1話2分に詰め込んだ
中国で数分程度の短編動画「ショートドラマ」が、50億ドル(約7800億円)規模の産業に成長している。現在ではショート動画専用のアプリが配布されており、アメリカでも人気を博している。中国・北京のCOLグループが運営する動画配信アプリ「ReelShort(リールショート)」では、1話2分という超短編形式のドラマを多数配信している。
視聴者を虜にする仕掛けのひとつが、過激な展開の連発だ。英エコノミスト誌は、ReelShortの代表作のひとつ『Never Divorce a Secret Billionaire Heiress(億万長者の秘密の相続人とは離婚してはいけない)』を取り上げている。
全55話のこのドラマでは、冒頭わずか30秒以内に、主人公の女性が夫の愛人の命を救うため輸血を強制されるシーンに突入。その後の数話で、計わずか10分の間に、結婚の強制、相続権争い、複数回の不倫など、「濃い」味付けのストーリーが矢継ぎ早に展開する。
米ワシントン・ポスト紙によると、嫁姑問題を描く作品ジャンルも人気だという。手強い姑と健気な若い妻の対立を描いた、いわゆる「昼ドラ」の緊迫感が売りだ。
嫌がらせをする姑、マザコン夫、そして復讐…
ある作品では姑が、成人した息子をベタベタに甘やかす一方、息子の妻には冷たく接する。料理の基本がなっていないと叱ったり、電気代が嵩みすぎると嫁を責めたりする展開は、もはやこのジャンルの定番だ。
別の作品は、さらに過激な描写が続く。とくに成人している息子の体を洗ったり、歯を磨いたりするシーンが描かれる。子離れできない姑の姿に、90年代の日本のドラマを想起する方もいるだろう。異常な状況に嫌悪感を覚えた主人公の嫁は、復讐を決意。姑の本性を夫に告発するか、あるいは夫との離縁を迎えるか、という究極の二択を迫られる。
ショートドラマの一部は中国国内版TikTokの抖音(ドウイン)やBilibili(ビリビリ)などの動画配信プラットフォームで配信され、視聴者の強い支持を得ている。過激な家族関係を描く作品の大ヒットが続き、ショートドラマは配信各社にとって新たな収益の柱へと成長した。