日本野球殿堂の得票率上位5選手
今回の報道では、イチローの得票が、日米いずれの殿堂入り投票でも「満票」でなかったことが、さも「大事件」のように報じられている。
日本野球殿堂
イチロー得票 323票(有効投票数349票 得票率92.6%)
MLB野球殿堂
イチロー得票 393票(有効投票数394票 得票率99.7%)
日本の殿堂入りではあと23票、MLBではあと1票足りずに満票を逸している。どちらの野球殿堂も75%以上で選出が決まるから、余裕での選出ではあった。
しかしファンやメディアからは「なぜ満票じゃないんだ」という声があがっている。「イチローのようにすごい選手に投票しない選考委員がいるなんて、おかしいじゃないか」と言うのだ。
しかしながら野球殿堂の選考に満票はそぐわない。過去の得票率上位5傑を見てみよう。
ヴィクトル・スタルヒン 97.9%(1960年)
稲尾和久 94.8%(1993年)
若松勉 94.7%(2009年)
王貞治 93.2%(1994年)
イチロー 92.6%(2024年)
これまで満票の選手はいない。NPB史上最多本塁打(868本)の王貞治は93.2%、最多勝(400勝)の金田正一は84.3%(1988年度)、最多安打(3085安打)の張本勲は76.8%(1990年度)、ミスタープロ野球と言われた長嶋茂雄は90.1%(1988年度)だった。
日本プロ野球90年の歴史を飾ったそうそうたる野球人の誰もが満票を得ていない。「イチローは、こうした野球人よりすごい記録を作ったんだから、満票で当然だ」と言うかもしれない。
イチローはべーブ・ルースより上だが
しかしイチローの通算4367安打の内、NPBで打ったのは1278安打にすぎない。選考基準に実働年数の規定はないが、NPBではわずか9年しかプレーしていない。
もちろん7年連続首位打者、通算打率.353は驚異的だが、20年以上NPBでプレーして偉大な記録を残した王、金田、張本らと「肩を並べた」あるいは「それ以上だ」と断言することはできないのではないか。
アメリカ野球殿堂ではどうか。過去の得票率上位5傑を見てみると、
マリアノ・リベラ 100%(2019年)
デレク・ジーター 99.748%(2020年)
イチロー 99.746%(2024年)
ケン・グリフィーJr. 99.3%(2016年)
ノーラン・ライアン 98.8%(1999年)
イチローは僅差で3位だ。近年、アメリカ野球殿堂の記者投票は、特定の選手に集中する傾向にあるが、ベーブ・ルースは95.1%(1936年)、タイ・カッブは98.2%(1936年)、ヘンリー(ハンク)・アーロンは97.8%(1982年)だった。
率直に言って、メジャーリーガー、イチローがルース、カッブ、アーロンなどを上回る実績を挙げたとはいいがたい。