※本稿は、大坂貴史『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
“食物繊維”を含む野菜は高血糖を防ぎやすい
健康維持のために積極的に食べるといい食品は? と問われたら、「野菜」と答える人がほとんどでしょう。1日に350gの野菜を食べることが推奨されていて、意識して野菜を食べている人もいると思います。
ところが2023年に行った厚生労働省の調査によれば、野菜摂取量の平均は1日250g。目標値よりも100gほど下回り、統計を取り始めてから最少であったことが示されました。糖尿病を防ぐために「野菜をもっと食べましょう」というのは簡単ですが、実際にはそれが簡単ではないという現実に即して対策を考えなくてはいけません。
野菜と血糖値の関係を考える上で、ポイントとなる成分は「食物繊維」です。
食物繊維には“水溶性”と“不溶性”の2種類があります。このうち、水溶性食物繊維は水分を吸収してゲル状になり、食べたものの消化スピードを遅くします。これによって胃から小腸への糖の移行スピードが遅くなり、血糖値の上昇を緩やかにすると言われています。だから、“食物繊維を含む野菜を食べると高血糖を防ぎやすい”のです。
野菜を増やす工夫としては、手間をかけずに食べられるものを選ぶのがひとつの手。レタスやミニトマトなら、包丁を使わなくても食べられます。
また、おかずの下に千切りキャベツを敷くのもおすすめ。千切り専用ピーラーを使用するのも便利ですし、すでに千切りにされているカットキャベツが袋入りで売られています。ブロッコリーやほうれん草、いんげん、オクラなどの冷凍野菜を活用してもよいでしょう。
便秘も糖尿病と関係している
糖質制限ブームもあって、ダイエット目的で主食を食べない人がいます。しかし、これは一歩間違うと健康を大きく損なう危険な食べ方です。糖質制限で体重が一時的に落ちるのは、水分を取り込む食物繊維が減るからで、体から水分が抜ける事も理由の一つです。結果的にリバウンドしやすいという報告もあります。
そして、食物繊維が不足すると便秘につながります。さきほどご説明したように、水溶性の食物繊維は水に溶けるとゲル状になるため、便を柔らかくします。不溶性の食物繊維は便のかさを増やして、ぜんどう運動などの腸の動きを活発にします。食物繊維はお通じにとって重要な働きをしているのです。
しかも、体から水分が抜けるのですから、便も硬くなって出にくくなるのは当然のこと。食物繊維を積極的に摂ることで腸内細菌にも良い影響がありますし、近年腸内細菌と糖尿病の関係についても研究で明らかになってきています。
この食物繊維の量の面から言えば、葉物の野菜よりも、豆類やいも類、海藻などを増やすようにするといいでしょう。米や小麦、そばなどの穀類をしっかり食べることでもカバーしやすくなります。
日本人の食物繊維摂取量が減っている理由は、野菜不足に加えて、玄米や全粒穀物などの未精製の穀類が減っている影響が大きいと考えられます。ご飯と一緒に枝豆やさつまいも、わかめなどを炊いたり混ぜたりすれば、食物繊維がたっぷり摂れる主食になります。