“好きかつ得意”なことだけに専念したら、会社員時代の倍以上の年収に
では、ガツガツ成長を目指さなくてもそれなりの収益は上がり、しかも会社は潰れないという仮説は正解だったのか?
「立ち上げからまだ1年半なので、会社が潰れないというのは検証中ですが、収益の面ではSquadで1億円以上の収益となり、黒字となりました。初年度はホームページもなく、プロモーションもしていない口コミ営業でしたが、好調な滑り出しでした。私個人としても会社員時代の倍以上に増えました。自分が好きで得意なことをやっているので、最高の価値を出すことに時間がかけられます。そうなると報酬にもはね返ってきますし、次の案件にも繋がります。そういうポジティブな循環で仕事ができています」
好きなことだけ、やりたいことだけをやっていても収入は飛躍的に伸びる――こんな夢のようなことがありうるのだ。しかし、小池さんたちSquadのメンバーは、プロフェッショナルスキルを持つプロ集団だからできたこと。そして納期を守る、クライアントとこまめにコミュニケーションをとる、真摯に対応するといった、長く働いているといつの間にかおざなりになる「当たり前のことを当たり前のようにやる」といった姿勢も崩さない。
“優しい世界”を目指すために、子供の能力を伸ばすプロジェクトを開始
会社に収める10%の上がりはどのように活用しているのか?
Squadが会社登記している、静岡県下田市の古い倉庫で、その活用イベントが開催された。ちなみに下田市は、前職の新規事業でとてもゆかりがあった場所だ。
イベント名は「カイブツプロジェクト」。子供は誰しも“怪物”のように、予想不能な才能を持っている。その才能を潰さずに伸ばしていこう、というのがプロジェクトの趣旨だ。
保育園児から小中高校生、大学生が、「自分のやりたいこと、仕事にしたいこと」をフリースタイルでプレゼン。秀逸なプレゼンをした参加者には、何十万という賞金を授与したり、「壁打ち」と称して、Squadのメンバーが、子供たちが夢想するビジネスモデルの聞き役になったりもする。
「自分たちが目指すのは“優しい世界”です。そして長くビジネスの世界で活躍する人は、学歴でも資格でも経歴でもなく、何かに“夢中になっている人”です。自分の好きなことや得意なことに夢中になって、周りをハッピーにする子供達をカイブツと名付け、稼いだ100万円を彼らにプレゼントして、応援することにしたのです」
普通の会社であれば、収益の活用に対して「どういうリターンがあるか?」「費用対効果は?」といった議論になるだろう。しかしSquadでは、メンバー皆で相談して使いたいことに使う。周囲の子供達や大人たちが喜んでくれるのであれば、その積み重ねが結果的に“優しい世界”に繋がる。
自分がそんな人間に変わったのは不思議だ、と小池さんは回想する。
営業パーソン時代は、数字だけを追い求め、誰よりも業績を上げたかった。だからこそ、トップ営業パーソンにもなれたし、新規事業も任された。今は“優しい世界”を目指して、より社会貢献度の高い仕事がしたいと思うようになった。
心臓に爆弾を抱えてはいるが、今の境地に至れたのは、病気と、Squadに理解を示してくれた家族とメンバーなどのおかげ。最後に小池さんは言った。
「障害者1級としての人生を謳歌したいです」