「親のやりたいこと」をきっかけにするといい

ここまで列挙すると、やることが多くますます大変だと思う方も多いでしょう。できればやり過ごしたいと思うかもしれません。

しかし人の死後の手続きは、必ず家族の誰かがやらなければならないのです。子供が事前に親の資産を把握できていれば、慌てふためくことも無くなるわけですから、絶対に把握しておいたほうがよいというのが筆者の主張です。

それでは「どうやって親から聞き出したらいいのか?」と悩まれると思います。

私がよくお客様にアドバイスしているのはずばり、「親のやりたいことを聞いてみる」という方法です。筆者の経験上、「親のやりたいこと」を最初に聞いたあと、それを“実現するためにお金が充分にあるのか”をさりげなく尋ねてみるのです。そうすると、親自身の口から自然とお金の話をしてくれるようになります。

実際にアドバイスをした方からも、「親とお金の話ができるようになった」というお声をいただきます。

例えば、「お父さん/お母さん、どこか旅行にいきたいところある?」という質問です。「前にCMのクルーズ船に乗ってみたいって言っていたけど、今年こそ行ってみれば? 予約は私がするから具体的に考えてみようよ」といった具合です。

外で息子と話すシニア
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

渋られたら“遠回りしてでも”聞き出す

あるいは、「親の代わりにお手伝いしてあげる」という切り出し方も有効です。例えば、実家に帰ると、山積みになった書類や、開封されず放置されている封筒を目にしてしまう……というケースは少なくないと思います。

そこで「年金の書類申請って結構難しいの?」などと声をかけてみるのです。「わからなくて困っているものがあったら一緒にやるよ」と、あくまでも「親のことを心配して、手伝ってあげたい」というスタンスで話を進めます。そうすると、親自身も「お金についての話」がしやすくなるケースが多い印象です。

基本は「親のため」「親の希望を叶える」ことを中心に話しかけてください。もし年末年始であれば、今年こそ行ってみたいところ、食べてみたいもの、会いたい人など、なんでも良いので「希望」を引き出してみてください。

ただ、そう簡単にはいかないと悩む方もいらっしゃるでしょう。「何もない」と言われたら、ぜひ「親が幼少期だった頃の話」や「若い頃の話」を聞いてみてください。

どこで生まれたのか? 幼少期はどんな子だったのか? 結婚のいきさつは? 想い出の場所は? 子育てで苦労した点は? どんな友人がいたのか? いま交流がある人はどんな人か? などです。自分の話を聞いてもらいたいと思う方も多いので、話が弾むのではないでしょうか。