「人を愛し、そして人からも愛される人間に」
さらに天皇陛下が「どのような立場に将来なるにせよ」とお答えになった同じ記者会見(平成17年=2005)で、一篇の詩を紹介されています。
「愛子の名前のとおり、人を愛し、そして人からも愛される人間に育ってほしいと思います。それには、私たちが愛情を込めて育ててあげることが大切です」とおっしゃって、アメリカの家庭教育学者のドロシー・ロー・ノルト(ホルト)の詩を取り上げられたのでした。これも見逃せないので、ここに一部だけ引用させていただきます。
敬宮殿下はこれまでに数多くお辛い経験もしてこられました。何より、母宮の皇后陛下が皇太子妃だった平成時代には、事実無根の記事が週刊誌などに氾濫し、理不尽なバッシングにさらされていました。皇后陛下は今も全快されておらず、ご療養は続いています。敬宮殿下にとってそれがどれほど悲しいご経験だったか、想像するにあまりあります。ご自身の不登校とか、痛々しいほどお痩せになられた時期も、ありました。
悲しみを輝きに変える
しかし「ご成年に当たってのご感想」(令和3年=2021=12月1日)では、そうした歳月を以下のように振り返っておられました。
普通、20歳になったばかりの若い女性が、自分の半生を振り返って「色濃い歳月」などと表現することが、どれほどあるでしょうか。しかも殿下は「多くの学びに恵まれた」とまで言い切っておられます。多くの苦しみ悲しみを「学び」として受け止め、それらを成長の糧として、自らの輝きに変えてしまわれる強さを、敬宮殿下はお持ちなのでしょう。
多くの国民に感銘を与えた、ご成年を迎えられた際の品格高く明るくユーモアに富んだ記者会見も、お辛かった日々を乗り越えられたうえでの、輝きでした。その“輝き”の源泉は何でしょうか。ご両親がそそがれたあふれるばかりの愛情でしょう。そのご両親から受け取った愛情の豊かさゆえに、悲しみさえも輝きに変えるお力を身につけられたに違いありません。