トランスジェンダーめぐる議論、いまや「アメリカ最大の火種」に

いまアメリカで、性別とトイレ利用をめぐる議論が過熱している。

来年1月、連邦議会で初めて、トランスジェンダー女性(出生時の性が男性で、性自認が女性)が下院議員に就任する。これを控え、「トランス女性は議会内の女子トイレを利用できない」とのルールが定められ、賛否両論を呼んでいる。

サラ・マクブライド氏のインスタグラムより
米下院選でトランスジェンダーを公表する初の連邦議員として当選したサラ・マクブライド氏(インスタグラムより)

これを機に、トランスジェンダーの権利をめぐる議論が再燃。米CNNは、「トランスジェンダーの権利問題は、この国(アメリカ)の価値観の対立における最大の火種のひとつとなった」と述べる。

議論はドナルド・トランプ次期大統領の方針にも飛び火した。かつて親トランスジェンダー派だったトランプ氏は、1期目の就任後に規制論者へと変貌。180度の手のひら返しだと指摘されている。実業界の盟友であるイーロン・マスク氏は、トランスジェンダーの娘を持つ。親子仲はすっかり疎遠になり、娘自身はアメリカの未来に失望していると報じられている。娘はついに、アメリカを離れる意志を表明した。

日本でも昨年、性別を問わず使える「ジェンダーレストイレ」が東急歌舞伎町タワーに登場。性別や障害の有無にかかわらず使える環境を目指したが、異性と居合わせる気まずさや、付きまといへの懸念から批判が殺到した。タワー開業からわずか4カ月で廃止に至っている。

出生時と異なる性を自認するトランスジェンダーの人々に対し、社会のルールはどのようにあるべきか。アメリカの議論を紐解く。

マスク氏の娘は父に愛想を尽かした

トランプ氏は大統領就任後、性別適合医療の制限、女子スポーツチームへのトランスジェンダー女性の参加禁止、トランスジェンダーの人々による性自認に基づくトイレ利用の禁止などを掲げている。

トランプ氏が加速する「反トランスジェンダー」政策は、強い支持層を生む一方、居場所をなくし傷つく人々も生んでいる。トランプ氏の実業界きっての盟友、イーロン・マスク氏の娘もその一人だ。

ポリティコによると、マスク氏のトランスジェンダーの娘であるビビアン・ジェナ・ウィルソン氏は、トランプ氏を支持する父親と疎遠になっているという。

トランプ氏が大統領選で勝利したことを受け、ウィルソン氏はソーシャルメディアのThreadsで、「たとえ4年間の任期だけだとしても、たとえ反トランスの規制が奇跡的に起きないとしても、これに賛成票を投じた人々はすぐにはいなくならない」と投稿。アメリカ社会に自身の未来を見出すことができなくなったと述べている。