長生きするには「抗酸化物質」を摂るべき
フランスのアンチエイジング医学の権威クロード・ショーシャ博士は、老化を遠ざけて若返るためには「身体の酸化」を避けなければならないと言います。「身体の酸化」とは細胞の炎症、つまり細胞を包む細胞膜に傷のできた状態のことで、がんの原因になることさえあります。
年齢を重ねると、程度の差こそあれ、細胞の炎症は必ず起こるものですが、ショーシャ博士は「細胞の炎症を極力抑えることで、50歳の見た目のまま120歳まで生きることも可能」と言います。炎症を最小限に抑えるためには、細胞が必要とする栄養素をきちんと送り届けて、炎症が起きても速やかに修復できるようにしなければなりません。
そのためには意識して抗酸化物質の豊富な食品を摂ることが大切です。抗酸化物質の代表はβカロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類と、亜鉛やセレンなどのミネラルです。
ビタミンAはニンジン、ブロッコリー、ほうれん草など色の濃い野菜に多く含まれ、玄米や大麦などに含まれるビタミンEや、肉類や卵に含まれるセレンと一緒に摂ることで細胞膜を炎症から守る働きをします。野菜や果物に含まれるビタミンCは免疫系を活性化し、牡蠣や豚レバー、小麦胚芽などに含まれる亜鉛は、活性酸素除去酵素などさまざまな体内酵素を作るのに関わっています。
他にはトマトに含まれるリコピンや、赤ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールなども抗酸化物質です。これらを参考にしつつ、要は好きなものを食べてください、ということです。食事の快感が免疫力のアップにつながり、ひいては認知症にもがんにもなりにくくなるのです。
“脳トレ”をやっても認知機能は良くならない
昔から「頭を使っている人はボケにくい」と言われていますが、これは一面の真実といっていいでしょう。
脳の委縮が同程度に進んでいる認知症患者の比較でも、とくに何もしていない人に比べて、日ごろから頭を使う環境にいた人は、知能テストでも脳の実用機能でも点数が高くなるケースが多いようです。ただし、頭を使うといっても、いわゆる「脳トレ」はほとんど効果がありません。
たとえば、数独ばかりをずっとやっていれば、認知症の初期ぐらいなら点数は伸びます。しかし、だからといって脳全体の機能が活発化しているわけではなく、単に数独ができるだけのこと。他のテストの成績がよくなることはありません。
このことはいろいろな実験で明らかにされていて、脳トレといわれるものは数独でも百マス計算でも、認知症予防という観点からはほとんど無意味です。国際的な科学雑誌『ネイチャー』やアメリカの医学雑誌『JAMA』でも、いわゆる脳トレの効果にまつわる大規模調査の結果が発表されています。
そのうちのひとつ、アラバマ大学のカーリーン・ボール博士による2832人の高齢者に対する研究では「言語を記憶する」「問題解決能力を上げる」「問題処理能力を上げる」などのトレーニングをした場合、練習した課題のテストの点だけは上がるのですが、他の認知機能は上がらないことがわかっています。与えられた課題を繰り返し行えば、そのことはできるようになっても、脳全体の活性化にはつながらないのです。