「ネット型選挙」を前に、高齢者はなす術もない
もちろん80代以上の人でも、90歳を超えた私の母のように、ネットやSNSを駆使するように今やなってきたが、そんなご時世でも、これらによる扇動がもたらす「劇場型選挙」の中心に位置する有権者は、やはり60代以下といえるだろう。
こういう「ネット扇動型選挙」の際に、ネットによる影響や扇動を受けにくい年代の有権者の民意が、自らの意思ではなく、行政の不作為による投票機会の制約という形で封印されている現状は、あまりにも歪んだ民主国家の姿とは言えまいか。
そもそも現在の日本で高齢者優遇政策がおこなわれていると言えるだろうか。じっさいには、高齢者の医療費自己負担割合が引き上げられ、介護保険制度も改悪され、高齢者の貧困率は増加傾向、生活保護捕捉率も低く抑えられ……けっして高齢者優遇政策などおこなわれているとは言えない現状ではないのか。
その状況にもかかわらず、『楢山節考』や『PLAN 75』といった映画を彷彿とさせる“姥捨山政策”を打ち出す政党が大躍進。「シルバー民主主義」など現実には存在していないと言わざるを得ないだろう。
もちろん現役世代や若者に余裕があるなどと言うつもりもない。高齢者にも現役世代にも若者にも、生活苦に喘いでいる人たちがいるという現実を見ることなく、世代間対立という一見同調してしまいやすい言説に乗せられてはいけないということを、私は述べたいだけである。熱狂や扇動に踊らされ、真の“敵”を見誤ってはいけないのだ。