20年前のコシヒカリBLは数カ月で味が落ちていたが…

そんな違いのあるコシヒカリBLは、食味や品質にも違いがあるのでしょうか。この疑問に対し、第三者機関である日本穀物検定協会の食味ランキングでは、コシヒカリBLは従来型のコシヒカリと同等との食味評価が出ています。

私自身の経験でいえば、まだお米の販売をしていた2005年にコシヒカリBLを販売したことがあります。その当時の私の評価は、新米で炊飯した直後であれば、コシヒカリBLの食味は従来型のコシヒカリと同等でした。

炊きあがったご飯をお茶碗によそっている手元
写真=iStock.com/Koshiro Kiyota
※写真はイメージです

しかし、収穫から時間が経ち、5月〜6月ぐらいになると甘味や香りが薄くなり、冷めてからの粘りがややなく、硬くなってしまう感じがしました。これに対して、お客様からも苦情が多く来たのを覚えています。

芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

ただ、これは過去の話です。コシヒカリBLは毎年、その年の気候なども見て、BL何号をどの地方で使うのかが変わってきます。ただし、その情報はシークレットでわかりません。そのような工夫の成果かどうかわかりませんが、最近のコシヒカリBLは、時期による味や品質の低下がほとんどなくなってきている気がします。

このように改良を重ねてきたコシヒカリBLを最終的にどう捉えるかは、その人次第とも言えるでしょう。しかし、美味おいしいコシヒカリをさらに効率良く世の中に届けたいという想いから改良されてきた品種ということは事実でしょう。

芦垣 裕(あしがき・ひろし)
米・食味鑑定士、初音屋代表取締役

横浜で3代続く米屋の店主。水田環境鑑定士・調理炊飯鑑定士・おこめアドバイザー。取り扱うお米は、田んぼの自然環境までを自ら確認し、気に入ったお米のみ。米・食味分析鑑定コンクール国際大会の審査員を20年以上務めている。そのほか、お米日本一コンテストin静岡の全国大会、天栄米コンクール(福島県)、栃木県産米食味鑑定コンクール、飛騨の美味しいお米食味コンクールなど、多数のお米コンクールの審査員を務める。また、ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」のお米特集をはじめ、フジテレビ「LiveNewsイット!」など、メディアでもお米に関するコメントを行い、お米の素晴らしさを伝えている。著書に『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)がある。