米の値段が上がったぶん、価格に見合うものを選びたい。横浜で3代続く米屋の店主であり、米・食味鑑定士でもある芦垣裕さんは「スーパーなど量販店で売られているブレンド米は安めだが、価格を抑えるために古米を混ぜる場合も。買う前に米粒の品質をチェックしてほしい」という――。

※本稿は、芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

白米
写真=iStock.com/insjoy
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本来のブレンド米の目的はいくつかの品種の弱点を補うため

お米はブレンドされて販売されることがあります。ブレンド米(複数原料米)と聞くと値段の安いお米のイメージがあるかもしれませんが、これは一概にそうとも言えません。

お米は、タンクに入れて精米しますが、異なる生産者のお米だったとしても、同一の品種のお米を混ぜて売る場合は、ブレンドとは呼びません(ただし、生産者限定を謳うお米は、生産者を同一のものにしなくてはいけません)。

お米は柔らかさや粘りなどの食感、香り、甘味やうま味などの味において、品種ごとに様々な違いがあります。お米のブレンドの目的として最も多いのは、それらの弱い部分を補完するというものです。

私のお店では以前、「コシヒカリ」と「ササニシキ」をブレンドして寿司用米として販売していました。配合比率は企業秘密ですが、コシヒカリは長野県飯山市、ササニシキは宮城県登米市のものを使っていました。

このブレンドで重要なのは、米の粒の大きさを同じぐらいのものを選び、精米することです。そうすることで、炊きムラを最小限にできるからです。

さらに、コシヒカリの粘りと甘み、そして長野県飯山地域の一粒一粒にしっかりした弾カのある性質を活かしつつ、ササニシキの柔らかさとあっさりした食感も味わえるようにブレンドしました。炊き上がるとキレイに仕上がり、卸していたお寿司屋さんもとても満足していました。

このように料理に合わせたブレンドは、お米屋が最も得意としていることです。このほかに例えば、味を濃くしたいときは、「ミルキークイーン」に代表されるもち米に近い性質の「低アミロース米」をブレンドすることはよくあります。

前年に収穫した米は夏になると「古米臭」がしてくる場合も

また、お米は7〜8月頃になると古米臭がしてくる場合があります。このような時に、独特の香りを持つ「香り米」をブレンドしてイヤな臭いを抑えることもできます。

ブレンドに適さないお米もあります。例えば、「ゆめぴりか」などは、食感が他のお米とは違うのでブレンドには適さないと思います。

スーパーなどの量販店で売られているブレンド米は、「価格を抑える」という目的で古米とブレンドしているものもあります。お米の表示欄や袋の窓からお米の粒を見て、品質は大丈夫そうかチェックをしてください。