連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)では主人公の佐田寅子(伊藤沙莉)が最初の夫に死なれ、裁判官として経験を積む中、同僚の裁判官・星航一(岡田将生)との再婚を考える展開が描かれた。脚本を書いた吉田恵里香さんは「寅子のモデルである三淵嘉子さんは再婚して夫の姓に変えたが、今の時代だったら、劇中の寅子だったらと考えて、事実婚に。そこの展開はかなり悩んだが、今ドラマで伝えるべきことを優先した」という――。
連続テレビ小説「虎に翼」第19週より、主人公の寅子(左・伊藤沙莉)と星航一(岡田将生)
写真提供=NHK
連続テレビ小説「虎に翼」第19週より、主人公の寅子(左・伊藤沙莉)と星航一(岡田将生)
「虎に翼」の名セリフ② 第19週「悪女の賢者ぶり?」より

寅子「今、色んなことを話したいと思うのは星さん。ドキドキしてしまうのも星さん……一緒にいたいのは星さんで……なんで私の気持ちは、なりたい私とどんどんかけ離れていってしまうんでしょうか」

(中略)

航一「なりたい自分とかけ離れた、不真面目でだらしがない愛だとしても……僕は佐田さんと線からはみ出て、蓋を外して、溝を埋めたい……駄目でしょうか?」

寅子「永遠を誓わない、だらしがない愛………なるほど」

吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ第19週』(NHK出版)

岡田将生が演じた寅子のパートナー、星航一の人物像

寅子が事実婚をする相手・航一は、そのキャラクターのヒントとなった三淵乾太郎さんよりも少し若い設定です。岡田将生さんが素敵に演じてくださっていました。

航一は三淵乾太郎さんと同じく、30代で子を持ちましたが、当時の男性の感覚はそうだったということもあり、妻・照子さんやお父さんや義母の百合さんに子供を任せ、自分は仕事ばかりしてきたんですね。

そういう意味で、裁判官としては一人前だけれど、父や夫としては十分に育っていないままで、ちょっと頼りなく、子どもっぽいところがあります。乾太郎さんと同じように初代最高裁判所長官の息子であるエリートで、日米開戦に突き進むのを止められなかったという罪の意識も抱えている。さらに、照子さんが病気で亡くなってしまってからは、完全に自分の中で蓋をしてしまいました。航一はもともと自己評価が非常に低く、子育てについては、お金のこと以外、自分は何の役にも立たないと思っているからです。