「家裁の父」と呼ばれた多岐川幸四郎のモデル、宇田川潤四郎

ところで、三淵嘉子さんについて「家庭裁判所の母と呼ばれた」と紹介されることがありますが、この呼び方に私はちょっと違和感を抱いています。たしかに、「虎に翼」の多岐川幸四郎(滝藤賢一)のモチーフとなった初代最高裁家庭局長の宇田川潤四郎さんは「家庭裁判所の父」でした。それは宇田川さんが家庭裁判所というシステムそのものを作った人だからです。

ドラマ「虎に翼」より、滝藤賢一演じる多岐川(右)
写真提供=NHK
ドラマ「虎に翼」より、滝藤賢一演じる多岐川(右)

一方、嘉子さんは設立に携わってはいるけれど、当時は若手のため、制度設計には携わってはいません。ドラマの寅子が多岐川に振り回されていたように、猛烈な機関車のように突き進む宇田川さんをあたふたしながら手伝っていた立場でした。そう考えると“家裁を作った”という意味の「母」というのはちょっと違うのではないかと思います。