部長でもキャプテンでもなく

浦島志奈さん(釜石商工高2年)。

この連載取材で会った65人の高校生全員に「将来、何屋になりたいか」と訊いてきた。最後の取材地釜石で、初めての回答に遭遇した。「金持ちになりたい」——そう答えてくれたのは、浦島志奈(うらしま・ゆきな)さん、岩手県立釜石商工高等学校2年生(総合情報科)だ。

「将来は金持ちになるのが夢なんで、はい。自分で稼いで金持ちになりたいけど、どっかの会社の社長とかじゃなくて、おっきい会社の中の有力者みたいな、その1人に入って、なおかつ自分がやりたいと思ったことをやっていきたいというかんじです。わたしがなりたいのは強豪チームのスタメンです! しかもエース! 部長でもキャプテンでもなく、エースなんです」

ちなみに浦島さんの部活は薙刀部。「部長でもキャプテンでもありません。成績は県大会2位、東北大会演技競技3位です。3月に全国選抜で伊丹に行きます。ポジションはスタメンだと思っています(笑)」。

お金、どれくらい欲しいですか。

「自分の一戸建ても建てたいし、親戚周りとかにも配れるくらいお金持ってる人になりたい。自分のお金で、自分で何とかしたい」

大きい儲かってる会社の「エース」になるには、たとえばバレーボールなら「決定率の高いスパイク力」が要ると思うのですが、浦島さんのそれは何になりそうですか。

「今の私に武器があるかどうかはわかりませんが、自分で偉いと思うところは、最後まで諦めないところだと思います。あと、なんでも挑戦するところ! もともとの才能がないので努力は人よりしていると思います。あとは、なんかわからないんですけど、昔から運が強いと思います(笑)。なので、これからは一日三善ぐらいを目標にしていけば、将来なにか良いことがあるのではないかと(笑)」

浦島さんが考える大きな会社とは、どういう会社ですか。

「ソフトバンク(笑)。みんなが名前を知ってる会社は、おっきい会社だと思います」

ここで引き合いに出して恐縮だが、高校生は知る機会が少ないであろう B to B 企業の例として、ワイヤハーネスや住設機器の大手、グループ従業員総計22万6300人の企業名を挙げてみる。社員数はソフトバンク(連結ベースで2万2710人)の約10倍だ。じゃあ浦島さん、矢崎総業は該当しませんね。

「わかんないです(笑)」

浦島さんの名誉のために付記するが、この日集まってくれた高校生6人全員が同社の名前を知らなかった。珍しいことではないだろう。高校生は B to B 企業の名を知る機会がきわめて少ない。同社が大人の間では知られている一部上場企業だと伝えると、なるほどと頷きながら浦島さんはこう言った。

「ある一部の人に知られてるなら、それもありですね」

つまり浦島さんの進路は、ネームバリュー優先という意味ではない。さて、大きな会社に入ったとします。浦島さんはそこでどういう仕事がしたいですか。

(明日に続く)

【関連記事】
300人の孫正義-72-仙台の着火
「絆ビジネス」は日本を救う小さな巨人になる
「東海&亜細亜」内定王子の共通点
なぜ就職人気ランキングは当てにならないのか?
柳井正VS孫正義 特別対談「起業は50代からがいい!」(1)