そのレベルです。
デスクトップ型でモニターと本体が別のタイプだったので、本体のパワーボタンが見当たらないのです。
そもそもボタンを押したら電源が入ることすら知らなかったので、おそるおそる「どうやって電源を入れるんですか……?」と、聞いたことを覚えています。
優しく教えてくれましたが、「このレベルか」って、一瞬、それを悟ったときの先輩女性の目を今でも忘れません。
「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」
2つ目が、「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」ということ。
契約書への入力で最大の関門は、物件名が難しいカタカナだったときでした。
一度目は、その入力方法がわからず、先輩女性に聞きました。
しかし、ある日、また同じことがわからなくなってしまったのです。
「○○さん、お忙しいところすみません。以前も聞いたのですが、もう一度教えてください。小さい『ぃ』ってどうやって入力したらよかったでしたっけ?」と、ちゃんと2回聞いていることを伝えながら聞きました。そうすると、怒らずにもう一度教えてくれたんですね。
「以前も聞いたのですが」という一言が、本当に大切なんだなと思い知りました。
それを添えるだけで、また説明しないといけないという相手の気持ちがクリアになるんですよね。
そういった、「社会での生き方の基礎」を、ここで学びました。もちろん、たくさん怒られることもありましたが。
総務時代に叩き込まれたこと
社会人になって、初めて「自分の頭で考えた」という瞬間があります。
それは、エクセルで入力作業をしていたときのことです。
一つ一つの数字を入力していたのですが、
「こんなムダな作業はおかしい。もっとラクな方法があるはずだ」ということがふと頭に浮かんだのです。
そんなときは、右にいる上司のサブマネジャーに聞くようにしました。
「ああ、それならブイルックアップ関数を使えばいい」「そういうときはサブトータル関数が便利だよ」と、そのとき自分が欲している情報をバッチリ教えてくれたのです。
仕事を覚えている僕にとって、それは毎回、感動の連続でした。
これがもし、自分で疑問に思ったことではなく、最初から「こうしなさい」と与えられたとしたら、ここまで大きな感動はなかったでしょう。
そして、次から次へと自分の頭で考えなくなったはずです。
そんな中でひと月が経ち、大きな仕事がやってきました。
大規模な引っ越しを担当することになったのです。
当時の光通信では、OA機器(コピー機やビジネスフォン)の販売が全盛期でした。
全国に営業拠点がある中で、小山市と郡山市と仙台市の3つの拠点で、責任者とそのチーム10人ずつが全員異動になるということでした。
それを聞いたのが月曜日。そして、週末には引っ越しが実行されるとのこと。つまり翌週には、新しい体制で営業ができる状態にするということでした。
これだけの仕事を新人に任せる会社は、正直、ないでしょう。
まだ契約書の入力しかしていないわけですから。
しかし、結果的に、先輩女性に教えてもらいながら、やりきることができました。
土曜日と日曜日で引っ越しの時間帯をそれぞれずらし、前の入居者が退去したらすぐにハウスクリーニングをし、玉突きで入居者たちを受け入れる……。物件が足りなくて金曜日までに新規の物件を契約し、鍵の受け渡しまでやったりもしました。
これが社会人になって最初の成功体験かもしれません。