「何十分か経ってすごい津波が来た」

【富澤】津波が来る前に、逆に水が引いたんですよ。ちょうど気仙沼の渡し場のところで見たら、あれっ? 浅くなってるなあと。そして何十分か経ってすごい津波が来た。津波って一旦引くんですね。だから油断してしまうかもしれない。怖いですよ。僕にはその光景がありますね。すぐ高台に上がったけど一足遅れていたら危なかったですね。

――お二人にとって出身地であり、これまでずっと被災地に寄り添う活動を続けてこられた。これまでの活動を振り返って。

【伊達】芸人として何ができるのかなってまず思いますよね。

東京で周りのみなさんたちは「笑いで元気に」っておっしゃる。僕らもその気になって、震災のあと現地に行ってコントとか漫才とかやったんですが、やはりそんな状況じゃないんですね。誰も笑いを求めていない。

「20人は食べられなくなるのでお持ち帰りください」

【伊達】支援物資をたくさん持って行ったんですが、行って初めて避難所のルールというのか、それを知りました。たとえば100人いらっしゃるところにお饅頭を80個買って「少し足りませんがどうぞ召し上がってください」と渡すと、「20人は食べられなくなるのでお持ち帰りください」と。

僕らは良かれと思って適当に買って行くんだけど、現場のルールというのがあるんだなと。災害支援って何なんだろうかということを考えましたね。

木箱に入ったお饅頭
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
「20人は食べられなくなるのでお持ち帰りください」(※写真はイメージです)

――行政はそう対応するんですよね。ただ緊急時には平等でなくとも、できるところから少しでも早く支援をして行くべきという危機管理の考えもあります。

【富澤】いろいろな活動で僕が大事にしているのは義援金もそうですが、あとバスツアーですね。50人くらいの規模ですが、全国から募集して僕らも一緒に東北をいろいろ回るんです。回りながらトークライブをやったり、行った先で語り部から話を聞いたり、そしてお土産屋さんに寄って特産品を買ってもらう。毎年やってるんですが、一時新型コロナウイルスでできませんでした。落ち着いたら、また必ずやりたいです。東北に行ってみようと思っても一人だとなかなか行きづらいかもしれないので、みんなで一緒に、楽しみながら復興につなげようというのも大事かなと思いますね。