取り寄せに1週間以上もかかる物流の構造問題

委託制度があるから売れない商品は、仕入先である取次に仕入原価で返品できますが、こんな商品回転率では小売店として利益が確保できるはずもありません。

小売店の儲けを示す端的な指標である交差比率(粗利益率と商品回転率の積)は、最低でも100は確保しなければなりませんが、現状では70以下になっていて、書店の交差比率は全小売業の中で最低の部類です。書店は本という商材だけで商売を成り立たせるには構造的に無理があるようになってしまっています。

本を持っている書店員
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次は、書店消滅の2番目の原因である出版物流の硬直性についてお話します。詳しくは前回記事でもお伝えしていますが、読者諸氏の書店への不満の最大のものは「注文した本の入荷が驚くほど遅い」でしょうか?

それには、理由があります。出版流通は定時配送の雑誌物流がベースに構築されています。この物流網は安価で大量に輸送するには最適なシステムですが、柔軟性や迅速性には欠けていてネット書店が本の注文を翌日には自宅に届けるのに比べ、早くても数日後、遅ければ数週間後に書店に届く事態が改善されていません。これでは、読者がどちらの流通チャンネルを選ぶかは明白でしょう。

書店経営者の多くは決算書を読めない

こんな状況であれば、出版界にはイノベーションが何よりも求められますが、残念ながらその見通しは暗いです。何故なのか? それが、書店消滅の3番目の原因である出版界の研修不在の惨状です。

出版界の研修は、新入社員研修とOJTを除けば存在していません。KADOKAWAと集英社を除けば、大手出版社の中でも人材教育を体系的に行っている事例を私は寡聞にして知りません。大手書店も同様です。先輩が「俺の背中を見て学べ」の昭和が色濃く残っています。

出版界以外の方は驚かれるでしょうが、出版界の多くの方がマーケティングやマネジメントを学ぶ機会はまれで、決算書を読める書店経営者は稀有な存在でキャッシュと利益を混同する書店経営者を私は数多く見てきました。

出版界のこんな危機的状況に対して昨秋大きな動きがありました。