業界トップの紀伊國屋書店でさえ厳しい

書店消滅の1番目の原因である利幅の薄さについて説明します。営業総利益率(粗利益率)は平均で23%程度です。再販制度があるので価格競争に陥らなくても良かった書店ですが、逆に値上げもできません。仕入れ価格の引き下げは、仕入先の取次(トーハンや日販)に行う他ないのですが、トーハンも日販も取次事業は赤字なので、交渉は事実上不可能です。

一方、人件費や光熱費、家賃などの販管費は上がる一方です。現状では、書店の粗利益の範囲内に販管費が収まらなくなっているのが、今の日本の書店の実情です。

今の書店の利益の状況を見てゆきましょう。主要な書店チェーンの経営状況は図表3参照の通りです。

どこの書店チェーンも売上高に対しての営業利益率が、ほんの少しのプラスかマイナスになっています。紀伊國屋書店は2023年8月末決算で過去最高の売り上げと利益を出していますが、本だけでの国内の店舗販売部門は十分な利益は確保できていないと推定されています(注記:紀伊國屋書店は国内店売部門だけの収支を明らかにしていないので、著者の推定です)。

半年に1回しか売れない本がずっと置かれている

丸善ジュンク堂書店は2024年1月末決算で会社全体では微増収増益で利益を出していますが、店舗・ネット販売事業では売上高に対する営業利益率は、わずか0.53%しかありません。紀伊國屋書店も丸善ジュンク堂もそれを図書館販売や外商でのセールスで補っています。

紀伊國屋書店は海外での収益も大きいと思われます。有隣堂は、2023年8月末決算で減収損失でした。本の売り上げは全体の4割程度になっていて、6割は文具や雑貨のほかに什器内装などの分野でカバーしようとしています。

次にキャッシュフローを確保する為に小売店にとって重要な商品回転率をみてゆきましょう。一般的に取次から書店への商品請求サイトは45日です。今まで、地方書店の経営を成立させてきたのは、1カ月以内にキャッシュを生み出す雑誌とコミックが堅調だったからです。街の書店では、売り上げ構成の半分が雑誌とコミックです。

書店の商品回転率は、どれくらいと思われますか? 以前は3回転ほどでしたが、今は2回転に迫りつつあります。この商品回転率は月間ではありませんよ。年間の商品回転率です。ざっくり言うと書店には半年に1回しか売れない本が並んでいることになります。