一方、海溝型地震は、海のプレートが陸のプレートの先端を引き込みながら沈むときにひずみがたまり、それが限界に達すると陸のプレートが一気に跳ね上がることが原因です。接するプレート面が広ければ広いほど、ずれて動く距離が長ければ長いほど、地震の規模は大きくなります。

また、内陸型でも海溝型でも、大きな地震では一般的に本震と余震が観測されますが、小さな地震が連続する群発地震では両者の区別がつかないことがしばしばです。さらに群発地震では、発生のきっかけや地震回数の増減の原因が未だによく分かっていません。

気象庁のデータによると、令和6年能登半島地震の始まりとされる20年12月は、有感地震(震度1以上の地震)が1回もありませんでした。その後、21年の有感地震は70回、22年は195回、23年は241回と発生回数は加速的に増加し、24年は5月17日までの半年足らずの間に1834回も発生しています。

季節による環境変化が地球の基礎構造に影響を与える?

今回、MITの研究者たちは能登半島の群発地震について、環境要因が地震の性質や発生に関わっていたり、地殻変動と相関性があったりするかどうかを調べるために、気象庁が公表している過去11年間の能登半島の地震活動データを精査しました。

その結果、地震が活発化する20年以前は、地震の発生は散発的で環境要因は無関係に見えました。対して、地震活動が活発化した20年後半以降は、地震波の伝わる速度が季節と関連性があると解析できました。

研究チームは、季節による環境変化が、群発地震を発生させるような形で地球の基礎構造に影響を与えるのではないかと考えました。具体的には、雨や雪がよく降る季節は地下の「間隙流体圧」(岩盤内の隙間や割れ目を流れる水の圧力)が上昇し、地震波の伝わり方が遅くなるといいます。地震波の減速は一時的なもので、水分の蒸発や流出によって取り除かれると間隙水圧は減少し、速度はアップするそうです。

さらに地震波の遅い時期、つまり岩盤内の水圧が高い時期は、特に大雪があった場合と地震発生のタイミングとで適合性が高いことが観測されました。

論文執筆者の1人であるMITのウィリアム・B・フランク博士は「地表での降雪やその他の環境負荷が、地下の応力状態に影響を及ぼします。大雪による降水現象は、能登の群発地震の発生タイミングとよく相関していました。地震がなぜ起こるかの原因となるのはプレートですが、いつどのように起こるかに影響を与えるものの1つは気候であることは明らかです」と語っています。