「外地で働く同志」という思いでつながっていた

彼は昭和の営業マンになった。夜中の1時に枕元に置いてある電話が鳴ったとする。かけてきたのが顧客だったとする。

野地秩嘉『海を渡った7人の侍 大和証券シンガポールの奇跡』(プレジデント社)
野地秩嘉『海を渡った7人の侍 大和証券シンガポールの奇跡』(プレジデント社)

「平崎くん、今、飲んでるんだけれど、もしよかったら来る?」

「行きます」と電話を切って、シャワーを浴びて、30分以内には店に到着するようにした。深夜でなくとも、週のうち4回から5回は顧客と食事をした。行くところは高い店ではない。居酒屋が多い。

打ち合わせを兼ねた接待ではあるが、大和証券がすべて支払うわけではない。割り勘だったり、顧客がごちそうしてくれることもある。社員と顧客という立場は変わらない。だが、意識の底では顧客も平崎も「オレたちは外地で働く同志だ」と思い込んだ。

食事や酒席をともにするだけではない。ある顧客とは週末にタイへ出張に行った。その顧客はシンガポールに本拠を置き、タイ、マレーシアなどで事業を行っている。週末でも顧客が行きたいと言えば海外出張に付いていくのが平崎のやり方だった。(第3回に続く)

海から見た夜景
撮影=永見亜弓
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