『ローマ帝国衰亡史』からピンポイントに探すには

例えば、E.ギボンの『ローマ帝国衰亡史』(ちくま学芸文庫、全10巻)を見てほしい。

この長大な書籍のどこに何が書いてあるのかを探し出すのは、容易なことではない。ましてや、自分の知りたいことがどこに書いてあるのかを探し出す、あるいは、そもそも書いてあるのかどうかを知るのは、至難のわざだ。

ローマ軍はなぜ強かったのか? それは軍事技術上の理由だけによるのではなく、退役後の兵士の処遇などの社会制度と関連していたのではないか? というような疑問に対する答えだ。

索引を用いて調べることが考えられるが、日本の書籍は索引のないものが多いので、これができない場合が多い。

教科書は、基本的には教師のガイドに従って使うことが前提にされているものだ。それに対して、ChatGPTを使うと、自分が知りたいことの答えを直接に得ることができるので、あとから書籍で確認する場合、どの書籍のどこを読めばよいかが分かる。

ウェブ記事で確認する場合もそうだ。全文を読むよりもずっと効率的に目的の情報を確認できる。

ChatGPTは書籍や検索エンジンを使うためのガイド

以上を考えると、ChatGPTが書籍や検索エンジンに取って代わるという事態は考えられない。ChatGPTは、書籍や検索エンジンをうまく効率的に使うための手段なのだ。

例えば、ChatGPTは、書籍やウェブ記事の要約をしてくれる。それを読めば、知りたいことが特定の書籍やウェブ記事に書いてあるかどうかの判断がつく。そして、先に述べたように、書籍やウェブ記事のどこを読めばよいかが分かる。これこそが、ChatGPTの役割なのだ。

つまり、ChatGPTは、書籍を読んだり検索したりするのを助ける道具であり、ガイドであると考えるべきだ。知識を得るための最終手段と考えてはいけない。

多くの人は、ChatGPTが最終的な知識を与えてくれると期待している。しかし、最終的な知識はChatGPTによって提供されるのではなく、書籍や文献の中にある。ChatGPTは、そこに辿り着くための手段にすぎない。これまでなかった強力な方法なのだが、最終的な答えを与えてくれるものではないことを、認識する必要がある。