「別の宇宙」にもなんらかの生命体がいる

よく講演などで受ける質問の一つに「宇宙人は存在しますか?」というものがありますが、これに対するマルチバース宇宙論の答えは「物理学的には」明快です。

「我々の宇宙」も空間的に無限で、しかも「我々の宇宙」の外にある別の泡にも「我々の宇宙」的なものがあるわけだから、そこになんらかの生命体がいるのは必然です。

無数の泡の中にある宇宙。多元宇宙論のイメージ
写真=iStock.com/oonal
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ただ、それが「宇宙人」なのかと言われたら、ここでも何をもって「宇宙人」なのかという話になってきます。

「別の宇宙」に住む生命体を「宇宙人」と呼ぶのであれば、「別のオレ」であってもそれは宇宙人ですから、量子力学的効果で分岐していく並行宇宙には、その宇宙人とやらがあちこちに住んでいる可能性は高いです。

別の宇宙から我々の宇宙に来るのはほぼ不可能

ただ、よく漫画などで描かれたりする、我々人間とは明らかに違う姿形の生命体を「宇宙人」とするのなら、それは生物の進化の問題であって、そのためには別の条件も大きく変わる必要がありますから、「別のオレ的宇宙人」よりは可能性は減るかもしれません。

ただし私たちの住む地球上でさえ、過去には僕らから見ると怪物的な意味不明な生物がいっぱい存在していたわけですから、私たちとは全然違う知的生命体がいたとしてもまったく驚きはありません。

あと、関連した質問でよくあるのは、我々よりずっと高い知能を持つ宇宙人が、自由にいろんな宇宙を旅することができるUFOを開発して、そのうち攻めてくることはあるのか、みたいな質問です。

本書で詳しく説明していますが、この宇宙人がもし「別の宇宙」にいるのであれば、その可能性はまずないでしょう。現在の物理理論によれば、別の泡宇宙や、膜宇宙から、なんらかの生命体が我々の宇宙にやってくるということは、ほぼ不可能です。

だからもしあるとしたら、我々よりIQの高い知的生命体が「我々の宇宙」のどこかにいて、彼らが私たちの住む地球に極めて性能の良い(しかし光速を超えることはできない)乗り物でやってくるという可能性だけです。