相手先に着くまで「キョロキョロ歩き」がおススメ

では、どうすればいいのか?

こんな場合は、気持ちにゆとりをもって、相手先に着くまで「キョロキョロしながら歩く」ことをおススメします。

初めて降りる駅や、まだ歩いたことのない道というのは知らないことだらけのはず。

旅行で訪れた異国の地だと思って、興味深く観察してみてください。

そのうえで、そこで見つけたネタを話題にすればいいのです。

たとえば、

「この駅、初めて降りましたけど、構内にお店がたくさんありますね」
「駅から歩いてきたんですけど、屋根付きのアーケードがあっていいですね」
「ここに来る途中に行列をつくっているラーメン屋さんがありましたが、有名なお店なんですか?」

という具合に、気づいたことや変わっていることなどを見つけて、最初の雑談のネタとして使いましょう。

相手もよく歩いている道である可能性が高いので、答えやすいはずです。

雑談上手な先輩が「古い駄菓子屋」に入ったワケ

じつはこの方法、雑談が上手な先輩を見て気づいたものです。

一緒に客先に行くときに、私は緊張しまくっていて、まわりを観察する余裕などなかったのですが、先輩はキョロキョロしながら歩いていました。

すると、「お、懐かしいなあ」と言いながら古い駄菓子屋さんの中に入っていったのです。

私は、そんな緊張感のない先輩にあきれていました。

その後、訪問して先方と名刺交換をしながら、その先輩は、

「ここに来る途中に懐かしい駄菓子屋がありますよね」

といきなり話を振ったのです。

私は、「こんなときに何でそんなことを言い出すんだ」と思いましたが、意外にも、

【相手】「そうなんですよ。私もときどき寄っていますよ」
【先輩】「じつは、さっきちょっと寄ってきました(笑)」
【相手】「わかります。つい寄り道したくなるんですよね(笑)」

こんな感じで話が弾みました。

その先輩は、おそらく無意識のうちにまわりを観察していて、最初の雑談のネタを探していたのです。相手先の近くで見つけたネタが雑談には有効だということを体感としてわかっていたのでしょう。

渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)
渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)

その日の打ち合わせは終始、和やかにうまくいきました。

私は、「雑談がうまい人というのは、話し方がうまいというよりも、話題のチョイスがうまいのだな」と、そのとき知ったのです。

この本を手にとったあなたは、この先輩のように無意識レベルで雑談ネタを探せるタイプではないでしょう。

でも、同じことを意識して行うことは可能です。

ぜひ、相手が話しやすい話題を積極的に探してみてください。

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