家で子供の能力は伸ばせない

「子育てしやすい間取りにしたい」という言葉には、「親が育児をしやすい」という以外に、「子供の能力を伸ばしたい」「引きこもりになってほしくない」といった子供の才能や性格等に対する良い影響やリスク回避への期待も含まれていると思います。

確かに「子供を親が期待する才能・性格にできる間取り」が実現できるなら凄いことですが、残念ながらそのようなものはありません。有名大学に合格した子供の家を紹介した本はありますが、これは成功例だけを集めた再現性が限定されるものといえます。

それだけでなく、子育て自体も子供の「認知能力・性格・才能・発達障害」への影響があまりないことが、一卵性双生児の研究によって明らかになっています。

安藤寿康氏の著書『遺伝マインド』によると私たちがどのような人間になるかは、遺伝と家庭環境(共有環境・家や子育て)、家庭外環境(非共有環境・学校や塾、友達)で決まるそうですが、この3つの中で最も子供への影響が少ないのが「家庭環境」です。

つまり親が「子供の将来」のためにできることは、居住地域・学校・塾といった家庭外環境を整えることくらい、ということのようです。

建築関係者としては、残念な事実ですが、「子供の将来を良くするための子育て」という視点では、家自体にお金をかけてもあまり意味がないことがわかります。