高齢者の健康維持では、どんな医療機関を選べばいいのか。医師の和田秀樹さんは「原則的に高齢者は大学病院へ行くべきではない。それよりも老人サロンになっているような町医者を選んだほうがいい」という――。

※本稿は、和田秀樹『「健康常識」という大嘘』(宝島社)の一部を再編集したものです。

病院の待合室で座るマスクをした高齢女性
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臓器別診療という大学病院のスタイルは高齢者に合わない

高度医療を提供する大学病院に行けば最善の治療を受けられると信じている人は多いでしょう。しかし、原則的に高齢者は大学病院へ行くべきではありません。

たしかに大学病院では、民間ではやっていないような最先端の治療を受けられるでしょう。しかし若い人であれば、高度な手術などを乗り越えて完全回復が望めるかもしれませんが、高齢者になると負担の大きな高度な治療によるダメージから完全に回復するのは難しくなります。

また、高齢者はいくつもの病気を抱えていることが多いのですが、大学病院では基本的に循環器内科、消化器内科、血液内科など病因ごとに診療科目があり、臓器別診療が行われています。そうすると高齢者はいくつもの専門的な診療を受けて回ることになり、それぞれに薬を処方されます。それで薬の飲みすぎになれば副作用の危険度が高まります。そのため臓器別診療という大学病院のスタイルは、高齢者にはフィットしないと考えられます。

大学病院では、医者自らが点滴や採血をすることはほとんどなく、たいていは看護師や臨床検査技師たちが行います。教授になるような「偉い」先生は、動物実験によって多くの論文を書いた人たちですから、若い頃には実験用のマウスの細い血管に注射するのが得意だったはずです。

現代では倫理的観点から人体実験が禁止されているため研究で人間を相手にする機会は少なく、その意味で医大教授のおよそ8割は、動物ばかりを相手にしてきた「獣医もどき」と言ってもいいほどです。