専門医は高齢者診療の基本がわかっていない

もちろん、動物実験ばかりをしてきたからといって、その医者の話がすべて間違いとは言いません。それでも、やはり高齢者になったら大学病院の専門医ではなく、地域のいわゆる町医者をかかりつけ医にしたほうがいいでしょう。専門医は高齢者を診る経験が少なく、高齢者診療の基本がわかっていない可能性があるからです。

高齢者診療の基本は、個人に見合った診療をすることです。とくに70歳、80歳を過ぎれば身体機能やその状態において個人差が大きいので、患者それぞれに対応した診療が求められます。たとえば同じ薬を飲んでも、それが効く人がいる一方で、だるさやふらつきなどの症状が出てしまう人もいるのです。

高齢者診療の基本がわかっていない医者や、患者に向き合って観察しようとしない医者にとっては検査の数値が頼りです。そのため患者自身の健康よりも、数値を正常にすることばかりを考えています。「薬を飲んだら長生きできる」という確証は医者側にもないはずですが、それでも処方するのは、それしかやり方を知らないだけです。

経験の浅い新人医が新薬を使うリスキーな治療もあり得る

また大学病院には研修医の養成という役割があるため、経験の浅い新人の医者が患者を担当することが少なくありません。先端医療として、データが十分でない新薬を使用したり、新たな施術が行われたりすることも多く、そうすると「新人が新薬を使う」というリスキーな治療が行われることになります。そのような治療が、高齢者の身体に多大なダメージを与えるかもしれません。

テレビや新聞で立派なことを言っている大学病院の医者を「きっと立派な先生なのだろう」と信じてしまう人は多いでしょう。しかし、新型コロナ禍の時にテレビで医者の話す言葉を信じたせいで、身体が弱り、要介護になった高齢者が現実にたくさんいたことを忘れてはいけません。

いくら立派な肩書きのある世界的な名医であっても、それが自分にとっても名医であるとは限らない。このことは肝に銘じておかなければなりません。