先端分野ではいまだにTSMCの技術頼み

マイクロソフトは“ウィンドウズ11”をアップデートし、生成AIを用いた支援機能“コパイロット(Copilot)”を搭載した。“ウィンテル”と呼ばれ、マイクロソフトのOSを支えるインテルの新型CPU(中央演算装置)の需要は持ち直した。パソコン関連分野の営業利益は28億8800万ドル(約4274億円)。事実上、10月~12月期の営業利益(25億8500万ドル)を支えた。

一方、パソコン以外の半導体事業は赤字が目立つ。旧世代の製造技術を用いて汎用型のチップを製造するファウンドリー事業は厳しい。2023年、同事業は4億8200万ドル(約713億円)の営業赤字を計上した。2022年から営業赤字は拡大した。

2016年、インテルは回路線幅14ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)から、10ナノメートルへの移行を計画通り進められなかった。その後、インテルは先端分野でTSMCの製造技術に頼り、旧世代の製造ラインを用いて車載用などのチップを受託製造する戦略をとった。

決算資料を見る限り、明確な成果はまだ読み取れない。生成AI利用に伴うデータセンター向けのGPU需要の急増などにもインテルは乗り遅れた。

先端チップ分野ではTSMCの独走が続く

先端分野で収益は伸び、汎用型の製品やサービスの需要は停滞気味。インテルの収益状況は、二極分化が進む世界全体の半導体関連産業の縮図にも見える。

ファウンドリー分野では、エヌビディアが設計・開発する、画像処理半導体の製造をTSMCが受託した。GPUの供給は需要に追い付いていない。価格帯の高い製品の出荷増で、TSMCの業績は回復した。先端チップ製造に関して、TSMCの独走は一段と強まっているようだ。

それと対照的に、韓国サムスン電子の業績回復は遅れた。ファウンドリー事業で、先端チップの良品率向上に時間がかかった。また、中国のファウンドリーである中芯国際集成電路製造(SMIC)は、米国の制裁強化などで微細化が遅れた。現在、SMICは5ナノメートルの回路線幅のロジック半導体の製造を実現できないと報じられた。米国のファウンドリーであるグローバルファウンドリーズも、業績不透明感は強い。

メモリー分野でも二極分化が進む。SKハイニックスは、生成AIに対応した広帯域幅メモリー(HBM)を競合他社に先駆けて投入し業績は回復した。米国のマイクロン・テクノロジーも、AIに対応した処理能力の高いメモリーを投入した。家電事業も運営するサムスン電子は、そうした先端分野の変化への対応がやや遅れた。